メルカリで本を売る人が知らない「価値」とは?ベストセラー著者に聞く
若い人のほうがアウトプットは得意
――たしかに。
岸見:だから学校教育で読書感想文を強いるのが、読書嫌いの人を作る原因じゃないかと思うのです。もちろん、そういう義務じゃなくてアウトプットしたいと思う人がするのはいいと思います。
若い人はSNSを使ってるので、発表する場は多いですね。本を読んだ感想を短い文章でSNSに出すのは面白いと思います。そういう意味では若い人のほうがアウトプットは得意なはず。
僕の年代より上になると書く機会ってほとんどありませんでした。だからたまに書く機会があると悪戦苦闘する人も多かったです。その点、今の若い人は普段から気軽に書いていると思います。
メルカリで本を売ることの是非
――最近、勝間和代さんがメルカリで本を売る行為が「著者への敬意を欠いている」と苦言を呈してました。
岸見:本を買って売るという話ですね。買った本をずっと持たないといけないとは思わないし、僕も蔵書家ではないので、あまりこだわりはないのですが。でも、メルカリに本を出すのは、本を読む意味とか価値を知らないのかなと感じます。一種の経済性からくるものでしょう?
――そうですね。
岸見:必要ない本を売ってお金にしたい。本を安く手に入れたい。敬意と言うのかわからないけど、本を読む姿勢の問題だと思う。おそらくそういう人は高い本は買わないと思いますし、いち早く売るでしょうし。本の価値を本当に知ってるのだろうかと思ってしまいます。本よりも高いものならためらうことなく買うでしょうし、すぐに売ったりしないのではないでしょうか。
――図書館で本を借りる行為についてはどうですか?
岸見:図書館で借りたら著者に敬意を示せてないのかと言われたら、そうではないとも思います。図書館で本を借りられても販売部数は下がらない、という統計データも出ていたはずです。図書館で借りて面白かったから、買って手元に置こうという人もいると思う。
だから、僕は著者への敬意がないとまでは思わない。ただ嫌だなと思う人はいるでしょうね。『嫌われる勇気』も最初出た頃、東京のどこかの図書館で170人待ちになっているのを見たことがあります。「自分で買ってよ」と思ったこともあるのですけどね(笑)。