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誰もが依存症になるリスクを抱えている。ソーシャルワーカーに聞く治療法

暮らし

 今や世代を問わず深刻な社会問題とされる依存症。世の中の依存症に対する偏見を取り除くソーシャルアクションをしたり、当事者の心のケアを担うのがソーシャルワーカーの役割です。

 大森榎本クリニックの斉藤章佳さんは精神保健福祉士・社会福祉士として約20年に渡りさまざまな依存症の治療に携わってきました。

斉藤章佳さん

精神保健福祉士・社会福祉士の斉藤章佳さん(提供:ウートピ)

 斉藤さん自身のキャリアを振り返ると共にソーシャルワーカーと依存症を取りまく現状ついて、話を聞いてみました。

あらゆる場面に関わるソーシャルワーカーの仕事

――斉藤さんがソーシャルワーカーという仕事や依存症という社会問題を意識するようになったきっかけはどんなことだったのでしょうか。

斉藤章佳(以下、斉藤):私は学生時代に、ずっとサッカーをやっていて、プロを目指して本気で打ち込んできました。それが大きな怪我をして夢を絶たれるという人生初の挫折を味わうんですね。大学では社会福祉学専攻だったためたまたま社会福祉士の養成課程に進むんですけど、その大学を選んだのもサッカー部が強いからという理由でした。

 大学4年の春頃、サッカーへの未練もあって将来の進路を決められない状態で腐ってました。そんな現実から逃げたい気持ちもあって、卒業旅行と銘打って1人沖縄旅行に行くことにしました。宿泊先も決めず那覇市の国際通りにある桜坂という歓楽街を歩いていたら、「兄ちゃん、いい店知ってるよ」って現地の人に声をかけられました。大学生でお金もないし、奢ってもらえそうだったので付いて行ったんです。

――勇気がありますね……!

斉藤:それで連れていかれた店で、泡盛のまわし飲みに参加させられたんですよ。菊之露という銘柄の30度くらいある地酒をグラスにどんどん注がれて、酔い潰れるまで競い合うという。私も体育会系だったので負けず嫌いで、お酒の強さにもかなり自信がありました。でも現地の人は鍛え方が違うのか、まったく酔わないんですよ。

 いつの間にか記憶がなくなってブラックアウト、気がついたら道端で寝ていました。財布の中身も全部なくなっていて、残ったのは着ている服とリュックの中の下着だけでした。

沖縄への一人旅で“初めてのカウンセリング体験”

――ツラい現実から逃れるべく旅行に行ったのに、そこで思わぬ災難に出くわしてしまった、と。

斉藤:そんなとき普通は警察に相談しますよね。でもそれだと親に連絡されるだろうし、進路も決まっていないなか、のんきに旅行に行って、しかも問題飲酒までやらかしたなんて知られたくなかったんですよ。一応、斉藤家の長男だったので……。

 帰ろうにも帰られなくて3日間くらい国際通り近くの公園のベンチに座って途方に暮れてるときにホームレスに声をかけられ、これまでの身の上話を全部聞いてもらいました。このときのカミングアウトが私にとって初めてのカウンセリング体験になります。

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