メルカリ、5年で1兆円アプリになるまでの知られざる数々の試練
メルカリがシェアを独占できた理由
当時のフリマアプリ業界には「パシャオク」「毎日フリマ」「ショッピーズ」「フリル」など複数のサービスがすでにありました。特にメルカリ社内でライバル視されていたのが、フリルです。2012年にスマートフォンアプリをリリースし、フリマアプリ業界で一歩先を行っていました。
フリルと、メルカリの大きな違いは、ターゲットユーザーの違いです。フリルは、若い女性をターゲットにしており、当時、男性は登録すらできませんでしたが、メルカリは、より広い層をターゲットにしていました。
そこで、デザイナーの宮上佳子氏は「しまむら理論」という考え方で、アプリをデザインします。衣料品チェーンのしまむらはハイファッションブランドとはかけ離れた、庶民的な店内内装やチラシ作りをしていますが、これは「地方に住む子供のいる主婦が気負うことなく利用できることを目的としているから」です。
「世界を狙うなら、メルカリもそうすべきだ」と宮上氏は強く主張し、開発陣の反対を押し切って、このデザイン案を通しました。その結果、メルカリは、多くの人に利用されるようになりました。
一方、ライバルであったフリルは、2018年に楽天が運営するラクマに統合されました。当時のメルカリとフリルのつばぜり合いは詳細に書かれており、本書の目玉のひとつです。
目まぐるしく成長していくメルカリ
メルカリは、この5年間で急成長を遂げました。しかし、現状に満足することなく、さらなる発展を目指しています。
=================
「まだまだこれからですよ。今の10倍、いや100倍になったら、世界的なテクノロジー企業として認められるんじゃないかな」(P245)
=================
前出の共同創業者の一人、富島氏はそう語ります。
本書を通して、圧倒的な成長を続けるメルカリの目まぐるしい毎日を追体験することができるでしょう。
とはいえ、肝心の海外進出はまだ道半ばですし、利用者同士のトラブルや悪質な転売業者などの問題は依然として残されています。最終的な結果や、会社としての評価が定まるのはもう少し時間が経ってからでしょう。
若いビジネスマンにとっては自分の仕事に思いを馳せながら読むと、さらに楽しめるかもしれません。
<TEXT/湯浅肇>