メルカリ、5年で1兆円アプリになるまでの知られざる数々の試練
フリマアプリを日常的に使っているという人も、最近では多くなってきたのではないでしょうか。
累計流通額が1兆円を突破し、海外でも人気を誇る、国内最大のフリマアプリ「メルカリ」。なんと、創業からわずか5年しか経っていません。
多くのベンチャー企業と同様に、創業当初は、様々なトラブルに見舞われ、それを見事に乗り切ってきました。『メルカリ』(日経BP社)では数々の困難を乗り切って、大企業に成長するまでが描かれています。
優秀な人材がメルカリに集ったワケ
著者である奥平和行氏は、日本経済新聞社の編集委員。関係者はもちろんのこと、ライバル企業へのインタビューなどを通し、メルカリ創業の経緯や資金調達、海外進出などテックカンパニーへと成長していく姿を詳細に描写しています。
「今なお成長途上であるメルカリについて執筆するのは大変だった」と後書きにあるように、かなり苦労しながら書いたことが読み取れます。
創業者の山田進太郎氏の周りには、常に才能を持った人物が多く、登場人物が出たり入ったりします。人物相関図が容易に描けないほどです。アップルのスティーブ・ジョブズに、スティーブ・ウォズニアックという優秀な共同創業者がいたように、山田氏にも富島寛氏、石塚亮氏はじめ、後に元ミクシィCFOの小泉文明氏、サイブリッジ創業者の濱田優貴氏など、実績がある優秀な人々が集ってきます。
山田氏の人望はもちろんのことですが、日ごとに急成長していく企業特有のスピード感を、この本を読むことで追体験することができます。
検索機能を未実装のままアプリリリース
メルカリの前身である「コウゾウ」が誕生したのは2013年2月1日。当初、アプリの開発は順調に進んでいましたが、本書によれば、操作時の違和感が拭えなかったそうです。
その理由は、開発言語にHTML5を採用していたからです。HTML5は、アップデートの工数などを大幅に省くことができる一方、発展途上の言語であったために、画面の反応速度が求めているほど機敏ではなかったそうです。
また、その時期に重要な役割を担っていたエンジニアの離脱が重なるなど、一時的に開発が危うい状態になりました。そこで、山田氏はHTML5での開発を破棄し、iPhone版のネイティブアプリをイチから開発することを決断。また、あらゆるツテを使って、iPhoneアプリの開発経験が豊富なエンジニアを雇います。
アプリのリリースは2013年7月を目指していました。しかし、資金も底をつきつつあり、悩んだ結果、「検索機能」や、売上金を銀行口座に振り込むための機能も実装せずにアプリをリリースしました。
そして、この危機を、規約に書いてある出金期限までにアップデートする“ウルトラC”で乗り切ります。このように、メルカリのアプリのリリースは、不完全な状態からスタートしました。