なぜ芸人クロちゃんは視聴者に受け入れられたのか?――ミレニアル世代が見た2018年
YouTuberが歌手活動、ドラマ制作に参入
もて:いまYouTuberってどんな活動をしているんですか?
白武:最近はもう動画をひととおりつくってしまったから、歌手活動を始めたり、オリジナルドラマをつくったりする人が増えています。
特にはじめしゃちょーさんは気合が入っていて、彼の偽物のYouTuberを主人公にしたドラマを作っている。ほかにも劇団スカッシュさんはドラマに力を入れています。
もて:グループで活動している人も増えているような印象があります。
白武:はじめしゃちょーさんもいまはグループ化していますね。みんな友だち同士、コミュニティを見たがっているんだと思うんですよ。
たとえばフィッシャーズさんはクラスのイケてる男子がキャッキャしているのを見ている感じが楽しいという意見を聞きます。
熱中と過剰の時代へ
白武:前回、オードリーの若林さんの「ななめ」の話をしましたが、ぼくは2018年にオンラインサロンをななめに見ることをやめることにしたんです。
もて:オンラインサロンは善かれ悪しかれすごく話題になっていた印象がありますね。
白武:キングコングの西野さんの新しい活動も最初は「ん?」と疑問に思う人もいたかと思いますが、結局、状況がひっくり返ってイケてるんだと気がつき始めた。
みんな自分の居場所を見つけたいんだろうなと思います。さっき話していた街のなかに集まれる場所がないことと関係しているのかもしれないですけど。
もて:ぼくは苦手意識が強くてあまりフォローしていなんですけど(苦笑)。白武さんはオンラインサロン結構チェックしてるんですか?
白武:ぼく自身は参加していませんが、箕輪さんやNewsPicksの動向は逐一チェックしていますね。この波に乗っていくぞと(笑)。これまでは自分の居場所なんて自分で見つけたらいいのにと思ってたんですけど、オンラインサロンで価値観が変わって頑張ろうと思えるならいいじゃんと思って。ダサいなーとかななめに見るのは止めました。
もて:ぼくもななめに見ているわけじゃないですよ! ただあんまり気があわなさそうだなと思って……(笑)。
クロちゃんが視聴者から注目された理由
白武:オンラインサロンに参加している人は、やりがいを感じるためなら自分がお金を払ってでもそのコミュニティに参加したいわけですよね。前回やりがいの話も出ましたけど、みんな熱中できることを探しているのだと思います。
もて:YouTuberの盛り上がりも「熱中」に対する憧れみたいなものと関係しているんでしょうか。
白武:YouTuberやオンラインサロンに限らず、熱中できる人がブームをつくるというか。たとえば小柳ルミ子さんがサッカーに熱中したことで話題になったように、熱中できる人はこれからもブレイクすると思いますね。熱中している人の過剰な感じが人を引き寄せていく。
もて:「過剰」ですか。
白武:「水曜日のダウンタウン」のクロちゃんさんが注目されたのも、過剰に正直だからじゃないですかね。いま「あいのり」もすごくて。でっぱりんという女性がすごくバイオレンスで、地上波だったら放送できないくらいの暴力性なんですよ。
「テラスハウス」も出演者が自己ブランディングしようと裏で台本をつくっていたことがバレて、ケンカが始まり大盛り上がり。過剰な人間が表れることがすごく面白がられているのだと思います。
もて:斜に構えることがNGになったことと、熱中とか過剰がよしとされることは同じ流れなんでしょうね。
白武:個人的には『桐島、部活やめるってよ』で映画に熱中しているオタクの神木隆之介くんが一番かっこいい存在だったことを思い出します。人からどう見られようというよりも、気持ちが前に出てしまう人は魅力的です。2018年に引き続き、2019年も「過剰」な人は注目されるでしょう。
【白武ときお】
1990年、京都府生まれ。いて座。放送作家、配信作家。担当番組は「ダウンタウンのガキの使い!!笑ってはいけないトレジャーハンター24時」「Aマッソのゲラニチョビ」「霜降り明星のパパユパユパユ」など
【もてスリム】
1989年、東京都生まれ。おとめ座。編集者/ライター。トーチwebにて「ホームフル・ドリフティング」連載中
<TEXT/もてスリム>