アナ雪は「ありのまま」ではない?Let It Goの正しい意味は
はじめまして、濱野将樹と申します。
有限会社イーミックスの代表取締役として、英会話スクール・レンタル自習室・海外留学サービス などの事業を経営しており今年で14年目を迎えます。
今回はそんな私が、ある有名な映画を通じて、みなさんに英語の表現やボキャブラリーを増やすためのポイントをお伝えしたいと思います。
「Let It Go」は「ありのままで」ではない
2014年に公開されたディズニー映画『アナと雪の女王』(以下、「アナ雪」)。原題は「frozen」、つまり「凍ってしまった」です。
世界中で大ヒットした本作ですが、日本国内でも興行収入255億円、歴代興行収入ランキング3位という記録的なヒットとなりました。2019年末には本国アメリカで、続編となる『FROZEN 2』の公開も予定されています。
その「アナ雪」の劇中で歌われている曲「Let It Go」。カラオケなどの定番曲ですが、この翻訳がめちゃくちゃだったのをみなさんご存知でしょうか?
ちゃんと翻訳すると「Let It Go」の意味は?
劇中、この歌詞は「Let it go let it go … can’t hold it back anymore.」と歌っております。直訳をすると「もう放して、ほっといて、もう元には戻れないから」という意味です。
作品をご覧になった方はお分かりだと思いますが、ここは、触るものを凍らせてしまう魔法の力を持っている王女エルサが、感情をコントロールできなくなってしまい、魔法を封じる手袋も取られてしまった場面。
エルサが住んでいたアーデンデールの城を逃げ出して、城下町を凍らせてしまいます。無理やり逃げ出したと言ってもよいでしょう。
それがなんと、「ありのー ままのー 姿見せるのよ」と訳されています。正直、原文に「姿」なんていう英単語はどこにもありませんし、訳文としてはめちゃくちゃです。そう言われると「なんでこんなにも違うの?」と思ってしまいますよね。
「ありのまま」は英語でなんと表現する?
「ありのまま」をもし英語で表現したいのであれば、ビートルズの曲のタイトルにもなっている「Let It Be」。これが正しいです。これは「ありのまま」、あるいは「なすがまま」というふうに訳すことができます。ほかにも「Just As You Are」 という表現でも問題ありません。
では、なぜ「Let It Go」を「ありのまま」というふうに訳しているのでしょうか? そもそもこの訳詞があっているのか、間違っているのかというと、当然ながら間違っています。
しかし、これといって特に世間で大きな騒ぎになりません。なぜなら、今まで自分の真の姿を隠し、たった一人、お城の中で暮らしていたエルサが魔法の力を開放し、氷のお城を造る。まさに本来そうあるべきだった“ありのままの姿”になったシーンだからです。
つまり本来の言葉の意味とは異なるけれども、なんとなく鑑賞している限りは、場面全体での整合性は取れているのです。 そもそも映画字幕に限らず海外小説などにおける日本語訳は、原作から独立した創作物です。