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【世界の働き方事情・中国】休日の残業代は300%!違法なブラック労働「996」とは?

コラム

【世界の働き方事情・中国】休日の残業代は300%!違法なブラック労働「996」とは?

海外在住ライターや海外で働いた経験を持つライターが、各国の仕事事情を紹介するシリーズ「世界の働き方事情」。今回は、近くて遠い国・中国の職業事情を現地の日本人学校に教員として勤務した経験のあるライターが紹介します。

前回は中国の若い世代の職業観や働くトレンドについてお伝えしました。今回は、中国の通勤事情や労働時間など、働く環境にスポットを当てて紹介します。

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通勤ラッシュ時の中国独自の規制とは

中国の都市部でも、日本と同じように地下鉄や路線バスは主要な通勤手段の1つです。大きく違うのは料金。都市によって多少の差はありますが、地下鉄なら2〜15元(約40〜300円)程度、路線バスなら1〜2元(約20〜40円)程度しかかかりません。

北京や上海のような大都市では、日本と同様に通勤ラッシュが発生し、地下鉄や路線バスの車内は混雑します。自家用車での通勤も一般的で、都市部では交通渋滞が深刻な問題となっています。

北京では「尾号限行」と呼ばれる制度を導入し、曜日によって特定のナンバーの車の走行を制限しています。たとえば、月曜日に「5」と「0」で終わるナンバーの車両が運行禁止になるのです。一般的に、平日の午前7時から午後8時まで適用され、電気自動車などの例外を除いてすべての車両に適用されるとのこと。車を複数所有する富裕層は、曜日によって車を使い分けるのだとか。

また、中国の特徴的な通勤手段として2種類の自転車があります。

自転車に乗って信号を待つ様子(撮影:重田信)

自転車に乗って信号を待つ様子(撮影:重田信)

1つ目はシェアサイクル。最近は日本でもよく目にするようになりましたが、中国では2016年頃から爆発的に普及しました。スマートフォンのアプリで自転車のQRコードを読み取ることで簡単に利用でき、どこでも乗り捨て可能な便利さが支持されました。

筆者は2017年から5年ほど深圳に滞在していましたが、歩道の至る所で、無造作に置かれたシェアサイクルをよく目にしました。

しかし、急速な普及に伴い、無秩序な自転車の放置や過剰投資による経営難が重なり、業界大手の企業が倒産するなど、一時は下火になりかけました。現在は、規制の強化や駐輪場所が整備されるなど、秩序ある利用が可能になってきているようです。

2つ目が電動バイク(電動自転車)です。1,250元(約2万4,000円)〜3,000元(約5万7,000円)程度で購入でき、運転免許が不要なことから、近距離の通勤手段として定着しつつあります。原動機付自転車並のスピードが出るにもかかわらず、多くのドライバーが車道・歩道を関係なく走行します。無音で通り過ぎていくので、歩いているとヒヤっとしたことが何度もありました。

道に停められた電動バイク(撮影:重田信)

道に停められた電動バイク(撮影:重田信)

中国のブラック労働「996」が話題に

中国の労働法では、1日の労働時間は8時間、1週間の労働時間は40時間以内と規定されています。都市部の企業や外資系企業を中心に、フレックスタイム制の導入も進んでいるようです。残業については、原則として1日1時間、特別な事情がある場合でも1日3時間、月合計36時間までとされています。

注目すべきは残業代です。平日の残業は基本給の150%、休日の残業は200%、法定休日の残業は基本給の300%を支払わなければなりません。

このような背景から、あくまで筆者の感覚ですが、定時退勤が当たり前という風潮が日本よりも強い印象があります。

2019年には、GitHub上で「996.ICU」というプロジェクトが立ち上げられたことに端を発し、長時間労働への批判が高まりました。「996」(朝9時から夜9時まで週6日間働くこと)で体調を崩した労働者が「ICU」(集中治療室)に運ばれる様子をやゆしたタイトルとのこと。

電子商取引(EC)大手のアリババ集団やドローン大手のDJIなど、中国の著名なIT企業が日本でいう「ブラック企業」として批判の対象となりました。

2021年8月、中国政府は「996」が明確に違法であると警告。多くの企業にて「996」の勤務体制を緩和もしくは撤廃する動きが見られるようになりました。長時間労働の是正が進んでいますが、一部の企業ではいまだ改善されていないようです。

長時間労働に対する不満は世界共通ですが、残業に対する捉え方は日本と少し違うようですね。

次回は中国の休みの取り方や福利厚生についてお伝えします。

[参考]
Notice: New Driving Restrictions Based on Last Digit to Be Implemented in Beijing|北京市人民政府
中国で社会的議論になった働き方「996」とは?|地域・分析レポート – 海外ビジネス情報 – ジェトロ

奄美大島出身。大阪府在住のライター。 タイと中国の日本人学校に教員として通算8年間勤務。 帰国後、フリーのライターへ。 補習校講師として、オンラインで国語を教えています。

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