海外在住ライターや海外で働いた経験を持つライターが、各国の仕事事情を紹介するシリーズ「世界の働き方事情」。今回は、注目が高まっているオーストラリアの職業事情を現地在住ライターが紹介します。

「仕事で移住したい国ランキング（ボストン コンサルティング グループ調べ）」で、１位に輝いたオーストラリア。世界中のビジネスパーソンから注目を集めるこの国の仕事事情に、興味津々な方も多いのではないでしょうか？今回は「人気の業界」から「ユニークな雇用形態」、そして「気になる給与事情」まで一気にお届けします。

「サービス業」が経済の中心を占める国オーストラリア

2023年、オーストラリア連邦議会のデータによると、「総労働人口の約80%がサービス業に従事している」ということがわかりました。具体的には「ヘルスケア」（15.1%）、「小売」（9.7%）、ITやエンジニアリングなどの「専門的・化学的・技術的サービス」（9.2%）、「教育」（8.3%）、飲食・宿泊といった「ホスピタリティ」（6.8%）などが含まれます。

なぜこれほどまでにオーストラリアでは、サービス業が圧倒的な割合を占めるのでしょうか？　その背景のひとつとして、「移民国家である」という点が大きいといえるでしょう。さまざまなバックグラウンドを持つ人々が暮らすこの国では、異なる言語や文化的背景を持つ労働者が求められます。例えば観光業やホスピタリティ業界では、複数の言語を話せるスタッフは非常に重宝されるケースが多いです。

また移民による人口増加は都市化を促進し、都市部のサービス需要が高まります。それに伴いサービス産業での雇用も増加。特にシドニー、メルボルン、ブリスベンといった主要都市におけるサービス業の発展は、目まぐるしいほどです。

雇用形態のトレンドと魅力的な「カジュアルローディング」とは？

オーストラリアで最も一般的な雇用形態は「正社員」（約68％）、次に多いのが「パートタイム」（約31%）。週35時間以上働くか、それ未満かといった違いはありますが、両方とも福利厚生があり、安定した働き方です。

一方、自営業（約15%）も近年増加しており、日本同様“起業ブーム”が見受けられます。オーストラリアでは柔軟な働き方が好まれる傾向にあるため、フリーランスや自営業が社会的に受け入れられやすい環境。特にIT、コンサルティング、クリエイティブ、教育などの分野で自営業者が増えているようです。

また、ライフワークバランスを重んじるオージーらしさを感じられるのが、「カジュアル」（約20%）という雇用形態。一般的に長期契約がなく、シフトは不規則。仕事の時間帯を自分のライフスタイルに合わせて選ぶことができます。福利厚生はありませんが、“高い時給”が魅力。「カジュアルローディング」と呼ばれ、通常より25%上乗せした時給が適用されます。短期間で効率よく稼ぎたい人向けの働き方といえるでしょう。

平均年収1,000万円超え！魅惑の給与事情

「出稼ぎのためワーキングホリデー（ワーホリ）で渡豪する若者が多い」という話を、近年よく耳にします。それもそのはず、オーストラリアの最低賃金の高さは世界でもトップクラス。2024年7月現在、最低時給は24.10豪ドル（約2,577円）。また残業代は通常の時給に対して、1.5倍（時間外労働の最初の数時間）から2倍（それ以降の時間）。さらに日曜・祝日は2倍（ダブル・ペイ）が支払われることが一般的です。

しかし驚くのはまだ早い！　フルタイム労働者の平均年収、その額なんと10万1,670豪ドル（約1,087万円）。世界中から「オーストラリアン・ドリームを掴みたい」、そんな人達が多いのにも頷けます。

とはいえ、即戦力が求められる傾向にあるオーストラリア。英語力はもちろんのこと、スキルと経験、資格と学位、適応力と柔軟性、人脈……、就職にはさまざまな要素が絡んでくるもの。労働市場を理解し、自分の実力を最大限アピールすることが重要であると筆者は考えます。

さて今回は、オーストラリアでの一般的な仕事事情をお届けしました。次回は「働き方」についてご紹介します。お楽しみに！

*1豪ドル＝約106.94円換算（2024年7月レート）

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