【日本はペットボトルリサイクル率世界トップレベル!】サントリーが「ごみゼロ」の町・徳島県上勝町と取り組む水平リサイクルとは?
サステナビリティへの意識が高まる中、日本は遅れを指摘されることも多い。しかし実は、ペットボトルリサイクル率においては世界トップレベルであることをご存知だろうか。今回は、ペットボトルの100%サステナブル化を目指すサントリーと、「ごみゼロ」の町・徳島県上勝町との取り組みに注目。ボトルからボトルにリサイクルする「水平リサイクル」とは? そして徳島県上勝町が世界から注目されるワケとは?
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目次
実は世界一!日本のペットボトルリサイクル率
日本国内のリサイクルにおいて“優等生”と言われるペットボトル。2021年度の回収率は94%、リサイクル比率は86%。欧州と比べると約2倍、米国と比べると約5倍と、はるかに高い世界最高水準を誇る。
なぜ日本のペットボトルリサイクル率は圧倒的に高いのだろうか?
●業界団体の厳しい規格
そもそも、日本のペットボトルは、製造段階からリサイクルしやすいよう作られている。これは、業界団体が自主的に細かく設定したもの。海外では色のついたペットボトルを見かけたことがある人もいるだろう。日本ではすべて透明、単一素材でできている。
●分別回収と再利用の制度化(容器包装リサイクル法)
1995年6月に制定され、1997年4月から一部施行(びん、缶、ペットボトルなど)、2000年から完全施行(紙製容器包装、プラスチック製容器包装)された「容器包装リサイクル法」。これにより、消費者が分別排出、市町村が分別収集、事業者がリサイクルするという仕組みが生まれた。
●「MOTTAINAI」文化
2004年環境分野で初のノーベル平和賞を受賞したケニア人女性、ワンガリ・マータイさん。日本の文化「もったいない」を、環境3R+Respect(地球資源に対する尊敬の念)だと定義し、世界共通語「MOTTAINAI」として広めることを提唱した。環境3Rとは、Reduce(ごみ削減)、Reuse(再利用)、Recycle(再資源化)。日本にもともと根付いているモノを大切にし、自然と共生する意識は、環境問題解決の下支えとなりえる。
注目される「水平リサイクル」とは?
そんな中、飲料メーカーのサントリーグループと徳島県上勝町が、「ボトル to ボトル」水平リサイクルに関する協定を2023年5月29日に締結した。
水平リサイクルとは、ボトルからボトルに再生させること。高いリサイクル率を誇る日本だが、現状は再度ペットボトルになる比率は20.3%(2021年度※)にすぎない。その他は洋服などの繊維・食品トレー・卵パック・カーペット・文房具などにリサイクルされている。
※出典:ペットボトルリサイクル推進協議会 年次報告書2022
リサイクルされるなら何に再生されてもいいじゃないかと思うかもしれない。しかし、一度洋服などの繊維・食品トレー・卵パックなどにリサイクルされてしまうと、再度ペットボトルに再生させることは困難だという。多くは使用後焼却処理となる。ペットボトルをすべて新しいペットボトルに再生させることで、何度もリサイクルを繰り返すことができ、より持続可能な社会の実現につながるのだ。
今回の協定により、2024年4月から上勝町で回収されたペットボトルは、すべてサントリーのペットボトルとして生まれ変わることになる。
2030年までに100%「ペットボトルのサステナブル化」を目指すサントリー
サントリーは、こうした水平リサイクルの取り組みを、10年以上前からスタートしている。現在は全国で80以上の自治体と協定を結んでおり、今回の締結は徳島県小松島市に次ぎ、サントリーとしては四国で2例目。自治体のみならず、事業者や学校法人などとの協定も広げている。
この水平リサイクルと、植物由来素材等のペットボトルにより、2030年までに100%「ペットボトルのサステナブル化」することがサントリーの目標だ。
徳島県上勝町が世界から注目されるワケ
一方、今回協定を結んだ徳島県上勝町は、徳島阿波おどり空港から車で約1時間ほど。四国で一番小さな町でありながら、「ごみゼロ」の町として世界から注目されている。
始まりは、2003年に上勝町が日本で初めて発表したゼロ・ウェイスト宣言だ。「ゼロ・ウェイスト」とは、無駄、浪費、ごみをなくすという意味。上勝町にごみ収集車はない。町民は自ら「ゼロ・ウェイストセンター(町内唯一のゴミステーション)」にごみを持ち込む。
しかも生ごみは捨てられない。自分の家で処理する決まりだ。その代わり、5万円の電動生ごみ処理機を1万円で利用できるように町から補助が出る。
出てきた廃棄物をどう処理するかではなく、そもそもごみを生み出さないようにしようという考え方が町全体に浸透しているのだ。
上勝町のごみ分別は13種類45分別
上勝町ではなんと45分別を実施。センターにはずらりと分別用のラックが並んでいる。混ぜればごみ、分ければ資源というわけだが、例えば紙ごみひとつとっても、以下の9種類に分別する。
- 新聞・チラシ
- 段ボール
- 雑誌・雑紙
- 紙パック(中が白)
- 紙カップ(中が白)
- 紙パック(中が銀)
- 硬い紙芯
- シュレッダーくず
- その他の紙(レシート・伝票・汚れた紙)
どのラックに分別すべきかわからないときはスタッフに聞くことができるが、ここまで細かい分別は、町民の理解と努力がなくては実現できないだろう。さらに、積極的に分別したくなるような仕掛けもあるので見ていこう。
このごみでお金が「出る」のか「入る」のか?金額も一目瞭然
各分別ラックには、このごみを処理するのに町のお金が「出る」のか「入る」のか、その金額はいくらなのか、どこで処理されるのか、何にリサイクルされるのかが分かりやすく掲示されている。この見える化により、自分が分別することが町のためになると実感できるのだ。
リサイクルできず「どうしても燃やさなければならないもの」もある。オムツやマスクなどの衛生用品、輪ゴム製品、塩化ビニール製品、靴、乾燥剤、革製品、タバコの吸い殻など。徳島市で焼却処理される。
ちなみに、現在無料でリサイクルされているペットボトルは、2024年4月からは水平リサイクルにより町の収入源となる。
こうして日々分別することで、リサイクルできるもの・できないもの、処理にお金がかかるもの、町の収入となるものなどを自然と意識できる。それはきっと、より分別しやすいものを選ぶ消費者・より分別しやすいものを製造する事業者という好循環へとつながっていくように思えた。
分別ポイントを貯めて対象商品と交換
センターには、ちりつもポイントコーナーもある。紙パックや使い捨てカイロ、雑紙、歯ブラシ、洗剤類詰め替え袋など対象となる8種類のものを分別するとポイントがもらえるのだ。1種類1ポイント制でスタッフに自己申告。
貯まったポイント数に応じて対象商品と交換できる。対象商品は、環境に配慮した⽇⽤品のほか、学用品や商品券もある。細かく分別することで、焼却・埋め立てごみから資源を救い、処理費用を大幅に抑え、その収益が町民にも還元される仕組みなのだ。
ゴミステーションには見えないスタイリッシュな施設
ごみを分別するゼロ・ウェイストセンターは、交流ホールやリユースショップ、宿泊棟「HOTEL WHY」などもあり、スタイリッシュで心地よい空間。ゼロ・ウェイストを学びたい人が交流体験できる施設を目指している。従来のごみ処理施設にはないこのおしゃれさもまた、ゼロ・ウェイストの拠点として注目が集まる所以であろう。
ゼロ・ウェイスト最先端地域を訪れて
上勝町は野焼きの時代を経て小型焼却炉を設置。しかし焼却炉で燃やした後の灰の処理に困る、という新たな問題が起きた。続いて法改正によりダイオキシンの排出基準が満たせなくなったため、3年で使用できなくなり焼却炉を閉鎖する。「ごみをできるだけ燃やさないために多分別をする」という独自の道を歩み始めた。
今回、何より驚いたことは、取材を経て筆者自らの行動が変わったことだ。これまで分別はしていたものの、容器をきれいに洗って乾かす、ラベルを完璧に剥がす、というところまでは至らぬこともあった。それが上勝町の45分別を実現する暮らしや、サントリーが掲げるペットボトルのサステナブル化100%への取り組みを目の当たりにし、分別だけでなくリサイクル可能な状態で捨てる、という行動を徹底するようになったのだ。
使用済みペットボトルは、中に液体が残っていると水平リサイクルできない。それが薬品などの可能性もあり、水平リサイクルの工程から外さないといけなくなるためだ。ペットボトル以外の用途にリサイクルされるか、ごみとして処理するしかないそうだ。
キャップやラベルを外し、水で軽くすすいでから捨てる。面倒にも思えるが、たったそれだけのことで、今手にしているものがごみになるか資源になるかが決まるのだ。
<取材・文・撮影/bizSPA!取材班>