Ado×中田ヤスタカの『ワンピース』主題歌、ガチなコラボに感じた新境地
8月6日公開の映画『ONE PIECE FILM RED』。人気の歌い手・Adoの主題歌「新時代」(作詞・作曲 中田ヤスタカ)が素晴らしい出来栄えです。
一昨年の大ヒット「うっせぇわ」が社会現象となったAdoですが、今回はネタ的な要素は一切なし。ボーカリストとソングライターが高い次元で拮抗する緊張感あふれる一曲になっています。
Adoの歌唱力を信頼しているのがわかる
曲はフリーテンポの独唱から始まります。裏声と吐息を織り交ぜたトーンで、ゆったりとしていながらもたつきを感じさせません。タイミングのセンスと滑舌のよさのおかげで言葉尻が流れずに聞こえる。
大胆で鮮烈なアレンジメントからも、中田ヤスタカがAdoの歌唱力を信頼していることがわかります。
そこから楽曲は怒涛の展開を見せます。疾走感溢れる演奏に重厚なサウンド。単純な8ビートも突き詰めるとこれほどの説得力を持つ。リズムこそが根源であることを強く主張する作りになっています。各楽器の音数やフレーズも極めて抑制的。曲にとって効果的な音だけが残っている。
特に印象に残るリフレインは
特に歌に入る前のリフレインが印象に残ります。エレキギターとシンセサイザーをミックスしたような音で4分音符が下降していくだけのメロディ。GのコードからAのコードを経てEマイナーへと至る3小節の中で、長調から短調へのワープを明快に因数分解してみせる合理性。
楽器初心者でもコピーできるほど簡単なフレーズなのに音楽的には雄弁です。選びぬかれた音階がその道筋をはっきりと照らしているのですね。
足し算や掛け算ではなく引き算と割り算で音楽をとらえる。中田ヤスタカのサウンドが厳しくも心地よい理由だと思います。
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