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不倫相手を家までストーキング…ドロドロの人間関係を描く、漫画家の思い

暮らし

 良くも悪くも、地方は都会に比べて住民同士の距離が近く、人間関係が窮屈になりがちです。そんな地方特有の人間関係をリアルに描いているのが、コミックバンチとまんが王国がタイアップしたレーベル「ututu(ウツツ)」で連載中の泥濘の食卓」です。

泥濘の食卓

『泥濘の食卓 1巻』(バンチコミックス)

 この作品は、地方のスーパーで働く25才の女性が主人公。店長から不倫関係の解消を迫られたのを機に、彼の自宅を突き止めてストーキングを開始するのですが……。不倫、虐待、ストーキングなどなど全編にわたり、ドロドロとした人間関係と心理描写が魅力の作品です。

 作者の伊奈子さん@naguruzo_)に、舞台設定から作品に込めた思いを聞いた前編のインタビューに引き続き、後編では漫画家になるきっかけから、「泥濘の食卓」発表に至る経緯を教えていただいた。

【マンガ】⇒「泥濘の食卓」の第1話を最初から読む

漫画のほうが自分の考えを生かせる

――最初に漫画を描き始めるきっかけはなんだったんですか?

伊奈子:昔から何か絵を書くのが好きだったんですけど、漫画家になろうとは思ってなくて、趣味で書いてたんです。でも当時、グラフィックデザインの専門学校に通っていて、就職もそっち系で探してたんです。そんなときに学校の授業で漫画を描く機会があって、それで広告よりも漫画のほうが作って楽しくて、自分の考えてることを生かせると思ったんですよね。

――専門学校を出てから本格的に漫画を描き始めたんですね。

伊奈子:そうです。バイトをしながら『ヤングマガジン』のちばてつや賞に投稿していて、そこで2016年(75回)に大賞をいただいたので、実家を出て東京に飛び出してきました。

――その後、泥濘の食卓が始まる経緯を教えてください。

伊奈子:賞は取りましたけど、なかなか連載には至らず2~3年ぐらい漫画家のアシスタントとか、あとはお役所で働いたりとかしてました。でもやっぱり漫画を描きたいと思って、『コミックバンチ』の月間賞に、投稿したのがきっかけです。そこで前の担当編集の方と繋がった感じですね。

古谷実と華倫変が大好き

泥濘の食卓

作者の伊奈子さん

――『ヤングマガジン』の熱心な読者だったのでしょうか?

伊奈子:実は、もともと漫画雑誌も全然読まなくて、あまり知らなかったんです。でも1990年代の『ヤングマガジン』の雰囲気がすごい好きで、古谷実さんとか、亡くなってしまいましたけど、華倫変さんが好きでした。特に「ピンクの液体」っていう読み切りがすごく好きだったんです。その方が『ヤングマガジン』で連載されてたっていうのを知って本当に軽い気持ちで送ったんです。

――現在連載している『コミックバンチ』にはどういう印象がありましたか?

伊奈子:バンチもごめんなさいあんまり詳しくはなかったんです(笑)。でも古屋兎丸さんの「女子高生に殺されたい」の熱心な読者だったので、その掲載雑誌って書いてあったので投稿しました。

泥濘の食卓 1巻

泥濘の食卓 1巻

田舎町のスーパーで働く「深愛(みあ)」は、パート先の店長と不倫関係にあった。何のとりえもない自分に優しくしてくれる店長が大好きな深愛。しかし突然、別れを告げられる。理由は妻の鬱。家族の為に使う時間が必要で関係を続けられないという店長の言葉は耳に入らず、深愛が導き出した答えは、「私はやっぱり、店長と幸せになりたい」。その想いが一つの家庭を泥濘へと引きずり込む――。

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