売上高「10分の1」の衝撃。インバウンド依存度が高い3社の業績に見る”活路”
2022年6月10日から政府は外国人観光客の受け入れを再開しました。制限はあるものの、コロナの影響で2年間停止していたインバウンドの受け入れが再開することとなります。近年は中国人観光客による爆買いが話題となるなど、特にアジア地域からの観光客が日本のインバウンド産業を潤していました。
しかし、2年間もブランクがあると、関連企業が大打撃を受けたことは容易に想像できます。実際にインバウンド産業はどの程度影響を受けたのでしょうか。旅行・小売・テックの3業種からインバウンド依存度の高い企業をピックアップし、業績への影響度を見ていきます。
ハナツアージャパン:売上高が10分の1に
ハナツアージャパンは、韓国の大手旅行会社「ハナツアー」の日本法人です。主に訪日韓国人向けの旅行ツアー提供や、日本国内におけるツアーバス運営、ホテル運営などを行っています。
最新2022/12期では(1)旅行事業、(2)バス事業、(3)ホテル等施設運営事業(Tマークシティホテル)、(4)その他事業(社内向けソフトウェア開発)の4事業を展開しています。同社は日韓関係の冷え込みで事業が悪化していたところにコロナが追い打ちをかけ、売上高が10分の1程度まで減少してしまいました。2018/12から2021/12期までの業績は以下の通りです。
【ハナツアージャパン(2018/12~2021/12期)】
売上高:78.9億円→65.9億円→9.5億円→8.6億円
営業利益:9.2億円→2.7億円→▲21.9億円→▲20.2億円
最終利益:5.6億円→▲7.7億円→▲28.6億円→▲19.7億円
セグメント利益(ホテル等施設運営事業):6434万円→1.7億円→▲9.4億円→▲14.0億円
外交問題とコロナのダブルパンチに苦しむ
2018/12期は前年の売上高(79.3億円)とほぼ変わらない値を維持していたものの、2019/12期は16%の減収となってしまいました。同年は韓国政府の反日的政策や日本政府による対韓輸出管理強化などで日韓関係が悪化した年でもあります。日本政府観光局(JNTO)調査では訪日韓国人の数は前年比で約26%も落ち込みました。
その結果、主力の旅行事業やそれを支えるバス事業、免税店事業も収入が激減しました。日本人客が多くを占めるホテル事業は増収となったものの、他事業の損失分を補えませんでした。
そこにコロナが追い打ちをかけるように発生し、2020/12期はさらに業績が悪化。「Go To Travelキャンペーン」にあやかって国内旅行客の需要を取り込もうとするも、メインの韓国人が来なければ事業は成り立ちません。旅行事業に至っては売上高がわずか1.4億円となりました。翌2021/12期もコロナ要因で業績悪化が続きました。オリンピックのメディアクルー送迎を受注したバス事業はやや増収となりましたが、焼け石に水といったところです。
ちなみにセグメント別の利益をみると、コロナ禍ではホテル関連事業の損失分が赤字全体に占める割合が膨らんでいることが分かります。無形のサービス業は事業縮小で赤字を減らしやすい一方、建物を抱え固定費の大きいホテル事業はすぐには撤退できないことを表しています。