食農ビジネス革命を起こす“26歳事業家”が語る「刺激を受けた出会い」
東日本大震災から11年――。「食」と「農業」にまつわる産業、「食農ビジネス」で注目を集める若き経営者・三浦大輝さん(26歳)も、被災者の一人。三浦さんは高校入学前に地元、仙台で震災を体験し、食の安心・安全に関心を持つようになりました。
現在は農産物の卸売業と小売業を手掛け、渋谷をはじめ東京と埼玉で「菜根たん」という八百屋を3店舗運営。「農業を選んだ人が、全員豊かな生活を送る」ことを目標に、“食農ビジネス革命”を起こしているイノベーターです。
2020年4月、初の緊急事態宣言が発令された際、百貨店の臨時休業に伴い大量のフードロスが発生しましたが、三浦さんはそうした野菜を買い取り、B品野菜をセットにしてネットで販売する「フードレスキュー活動」を実施。これがツイッターで3.9万件もリツイートされて大きな話題となり、メディアにも取り上げられました。
今回は三浦さんの著書『渋谷の八百屋発[食農ビジネス]革命』より「自分を変えてくれた出会い」を紹介します(以下、同書より抜粋して再編集)。
切れ者の同年代に大いに刺激される
昆虫食歴23年、現在は日本橋馬喰町にある昆虫食レストラン「ANTCICADA(アントシカダ)」のオーナーとして活躍する「地球少年」こと篠原祐太くんに出会ったのは2016年、僕がジビエ普及活動に取り組んでいるころでした。「食」と「農業」に興味を持つ学生仲間が集まる場でしたが、篠原くんのスケール感にはとにかく圧倒されました。
ちなみに彼は当時、慶應義塾大学の文化祭イベント「意識高い系王(慶應)選手権」で優勝していました。篠原くんは当時からコオロギラーメンを供するイベントを開催するなど「昆虫食」をテーマに活動していたのですが、彼のすごさは、同じように食を語っていても、それが従来の食のステージをはるかに超えているということです。
昆虫食というとゲテモノ料理、わざわざ食べなくても、と思われる方もいらっしゃるでしょう。でも、彼の追求する昆虫食は、ほかの食材を使った同じ料理と比べてもちゃんと美味しいのです。
人との出会いと新しい発想はセットに
そもそも彼が昆虫を食材としているのは「未利用の食材や、スポットライトが当たらない食材を使う」ことであって、ゲテモノ喰い、珍しいものを食べることが目的ではありません。食材の対象は昆虫だけでなく、特定外来種、廃棄食材などに及びます。
既存のイメージに左右されることなく、地球上に存在するすべてのものに対してフラットな視線で食材としての可能性を見いだそうとしている篠原くんに、「フツー」感覚の僕は本当に「目からウロコ」でした。固定観念がどんなに世界を狭く、つまらないものにしてしまうのかということを再確認すると同時に、人と出会うこと、つながることって本当に面白いと思ったのです。僕は気づくと「人間が好きなんですよね」という言葉を口にしているのですが、たくさんの出会いを体験すればするほどそう思います。
相手と自分に違うところがあるほど自分が固定観念に縛られていたことに気づかされて、本当に興味深い。新しい企画、ビジネスシステムの突破口になるものはそういう出会いや気づきから訪れるような気がします。人との出会いと新しい発想は、セットになっているのかもしれません。