西武は大苦戦、東急はまだマシ。首都圏私鉄7社のコロナ苦境の業績を解く
テレワークや休日の外出自粛の影響で、これまで安定的に収益を出していた航空業界や鉄道業界が大打撃を受けています。JR東日本(東日本旅客鉄道株式会社)は第1四半期(4~6月)の成績が2年連続で赤字となってしまいました。
前期は1554億円の赤字で今期(2022/3期)も770億円の赤字です。肝心の鉄道収入は前年より増えましたがコロナ以前と比較すると半分程度しかありません。首都圏全体を網羅するJRが苦戦する一方で好調な私鉄はあるのでしょうか。京王、小田急、東急、西武、東武、京成、京急の首都圏私鉄7社についてコロナ禍での業績をみていきます。
鉄道も百貨店も厳しい京王
京王電鉄の京王線は新宿を起点に西のやや南方に広がる路線で、JR中央線の南方、小田急線の北方を走ります。メインの京王線は京王八王子を終点としますが、相模原線は調布から多摩方面へ向かいます。また、渋谷から吉祥寺まで走る井の頭線もあります。さて、コロナ禍ではどの程度影響を受けているのでしょうか。
2020/3期と2021/3期の業績を比較すると営業収益は4337億円⇒3154億円と27%も減少しており、営業利益は360億円⇒-209億円と大幅な赤字に転落してしまいました。売上高の3割弱を占める鉄道・バス事業がいずれも3割近く減収しましたが、全体の4割を占める主事業の流通業(デパート・商業施設)も2割近い減収を記録しました。
デパート各社の業績悪化が著しいですが、新宿に京王百貨店を構える分、京王電鉄の赤字幅も増えてしまったようです。ちなみに最新2022/3期1Q(4~6月)の営業収益は680億円と前年の591億円より伸びてはいますがコロナ以前の水準には戻っていません。
小田急も百貨店事業に重点を置いているが…
小田急電鉄も新宿を起点とする路線で、小田原・箱根湯本まで走る小田原線がメイン路線です。その他には新百合ヶ丘から分岐する多摩線や、相模大野から江の島に向かう江の島線があります。
コロナ禍での業績は、こちらも京王電鉄と同様、百貨店事業に重点を置く分、運輸業と流通業(百貨店・商業施設)の両面で業績が悪化しています。2020/3期と2021/3期の業績は営業収益が5341億円⇒3860億円と28%も減少しており、営業利益は411億円⇒-242億円と前年の半分ほどまで赤字幅が広がってしまいました。
運輸業・流通業が収益全体に占める割合はそれぞれ3割、4割と京王電鉄に近しい事業構成となっており、いずれも2~3割程度の減収となったことから小田急電鉄もコロナ禍の影響を免れていないようです。今期は会計基準変更のため単純比較はできませんが、1Qの収益は884億円と前年の704億円よりは伸びているもののコロナ以前の収益には未達となっています。