全米アニメ史上興収No.1監督が語る「20代はたくさん失敗したよ」
アカデミー賞アニメ映画賞を受賞した『Mr.インクレディブル』、『レミーのおいしいレストラン』の監督であるブラッド・バード監督(60)。
現在は監督最新作であるピクサー・アニメーション・スタジオの長編アニメ第20作『インクレディブル・ファミリー』が公開中です。
『アナと雪の女王』『トイ・ストーリー3』『ファインディング・ドリー』を超えて、アニメーション史上全米興収歴代No.1を記録した本作をひっさげて来日したバード監督に、話を聞きました。
子供のころ、スパイものにワクワクした
――本シリーズはヒーローものでありながら、スパイもののテイストが強いですね。
ブラッド・バード監督(以下、バード監督):子供のころ、私がすごくワクワクしたアドベンチャーものというのは、スーパーヒーローものではなくスパイものだったんだ。
イカれたヴィランとか、クールなガジェット、かっこいいファイトシーン、危険なにおいをまとった女性キャラといったものを見たかったら、スパイものに求めることになった。当時の私がスパイヒーローものに求めていた要素をそういった作品に感じていたんだ。
――ジャズテイストの音楽も本当にかっこよかったです。
バード監督:かっこいいアドベンチャーものっていうと、スパイもので聴いたような管楽器を使ったああいう音楽が聴こえてくるよね。ガジェットなんかもスパイもので見たものを想起する。
たとえばみんなが集まった部屋のレザーシートにボスが座っていて、ひざの上の猫をなでながら、「お前、裏切っただろう」といってボタンを押すと、裏切ったキャラクターにビリビリ!っと電気が流れて死んでしまう。
それを、ほかの者が見て手に汗をにじませながら震えている。ああいったシーンがすぐに浮かんでくる。私にとっての最高のヒーローものというのは、こうした作品から来ているんだよ。
子どもの頃に好きだったアニメは
――アニメ作品で特に好きだったものはありますか?
バード監督:「科学少年J.Q」が一番好きだったね。実は『インクレディブル・ファミリー』の本編にも、家族が見ている画面に映っているんだよ。
アメリカのアニメというのは、土曜日の午前中に放送されていることが多いんだけど、「科学少年J.Q」はプライムタイムに放送されていた。子供が主人公だけど、スパイものに大きな影響を受けていた作品だった。音楽も、まさにスパイものに流れてくるような、ボンゴなんかを使ったものだったよ。
前作から『インクレディブル・ファミリー』までの間に、私は実写の『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』を撮ったけれど、そのとき、私が撮ろうとしたシーンを見た撮影監督が「監督、これはちょっと漫画チックじゃないですか?」と言ってきたんだよ。「何を言ってるんだ、君。これは『ミッション:インポッシブル』だろ。漫画チックは大歓迎じゃないか!」と言ったのを覚えているよ(笑)。