大坂なおみ、うつ症状を告白。自らの病を告白するZ世代に医師の見解は
6月17日に、東京オリンピックのテニスシングルス出場権を獲得した大坂なおみ選手(23)。その直前には「うつ症状」に悩まされていることを告白し、全仏オープンを棄権したことが話題になった。
背景には記者会見などでの精神的負担があったと言われているが、強靭な精神力を持っているトップアスリートでもうつ病になる理由や兆候あったのだろうか?「VISION PARTNERメンタルクリニック四谷」院長の尾林誉史先生に話を聞いた。
記者会見がうつ病の遠因に
「大坂なおみ選手に(うつ病)の徴候があったとは、言い切れません。抑うつ症状と悩みを抱えた状況は、一見したところ区別がつきませんし、うつ病の病期にもよりますが、頑張らねばならない場面で弱みを見せないことは、相当無理をすればできてしまうこともあるためです」
尾林先生は「うつ病のかかりやすさに年齢で差異はありません」と語る。一方で、自らの病や悩み(セクシャリティなどを含め)を隠さず公表することは、大坂選手を含むZ世代に共通する傾向とも思える。この点に対して、尾林先生は、こう述べる。
「包み隠さず公表できる点では、従来世代に比べ、回復の可能性は高いかもしれません。しかし、周囲の支援を得ることが回復の一助となることも多く、それができない人にとっては、足を引っ張る原因になり得ると思います」
メンタルを蝕んだ可能性は否定できない
大坂選手は「記者会見が苦手」と言っているが、うつ病との関係はあるのだろうか。
「あり得ると思います。大坂なおみ選手のようなタフなメンタルを有する著名選手であっても、あれだけ極度の緊張感を伴う記者会見の場で、その後の選手生命を左右する手厳しい質問の嵐を想像するだけで、精神的に参ってしまうことはあると思います」
また、大坂選手といえば、人種差別に対する抗議運動は世界的な注目を集めた。これもメンタルに悪影響を与えた可能性があるという。
「人種差別に対する抗議活動は、彼女の生き方やアイデンティティを示す場であったと思います。それ自体は、信念を持って行ってきたことでしょうから遠因とは言えません。しかし、それをきっかけに、彼女の生き方に容赦なく攻撃を加える集団がいたことは事実でしょう。その集団の存在が彼女のメンタルを蝕んだ可能性は否定できません」