ジリ貧の缶コーヒーを救った『鬼滅の刃』。他のコラボ商品も爆売れだが、負の側面も
2020年最大のヒット作といっても過言ではない漫画『鬼滅の刃』。
2016年11月に連載開始となったシリーズは2019年後半に入って突如として人気に火がつき、累計発行部数は異例の1億5000万部を突破しました。出版元の集英社の2020年5月期の売上高は前期比14.7%増の1529億円。純利益は前期比2倍の209億円となりました。
「鬼滅コラボ」が企業に与えた影響は?
2020年10月のコロナ禍で公開された劇場版『鬼滅の刃』は全世界の累計来場者数が4135万人、総興行収入は517億円に達し、歴史的な大ヒットに。日本のコンテンツビジネスの歴史を塗り替えたこの作品に企業が熱視線を注いでいます。
清涼飲料メーカーのダイドードリンコは「鬼滅缶コーヒー」を発売。コラボ缶だけが売り切れるほどの状態が続き、3週間で5000万本を売ったと言われています。
鬼滅の刃とコラボレーションした商品は、企業にどれほどの影響を与えているのでしょうか? ダイドーとくら寿司の例を中心に紹介します。また、コラボ商品の仕組みや、その弊害にはどのようなものがあるのでしょうか。併せて解説します。
ジリ貧の缶コーヒーを救った鬼滅缶
ダイドーが得意としていたショート缶のコーヒーは市場の縮小が鮮明になっていました。全国清涼飲料連合会の調査によると、2013年に年間160万キロリットルを超えていた缶コーヒーの生産量は、2018年に120万キロリットルを割り込んでいます。この年、ペットボトルタイプが120万キロリットルを超えて、缶コーヒーを上回りました。
喫煙者の減少や主戦場がコンビニエンスストアに移ったことで、自動販売機での缶コーヒー販売数が落ちたことが背景にあると言われています。市場規模に依存するダイドーの缶コーヒー事業も苦戦していました。2020年1月期のコーヒー事業売上高は前期比8.8%減の608億6800万円でした。しかし、2021年1月期の売上高は1.7%減の598億2900万円と微減に留まったのです。これがコラボ効果です。
ダイドーが鬼滅缶を販売したのは2020年10月。コラボ商品の販売が本格化する前の2020年2月-10月のコーヒー事業の売上高は486億3800万円で、前年同期比4.3%の減少でした。しかし、鬼滅缶を販売して人気が出た後の2020年11月-2021年1月の売上高は161億9100万円となり、前期比6.0%の増加に転じたのです。鬼滅缶を購入するための目的消費が生まれ、コーヒー事業の売上高が押し上げられました。異例中の異例の出来事と言えます。