商社マンから漫画ベンチャーに。「大丈夫、失敗は挽回できる」
コロナ禍で外出ができなくなったことで、自宅で映画鑑賞や読書をする人も増えているはず。インプレス総合研究所が昨年発表した「電子書籍ビジネス調査報告書2020」によれば、電子書籍と電子雑誌を合わせた電子出版市場は3,750億円と、堅調に伸びている。
2006年から電子コミックサービス「まんが王国」を展開する株式会社ビーグリー。前編では、同社の戦略や電子コミック市場の変化、今のコンテンツビジネスに求められていることなど同社代表取締役の吉田仁平氏に聞いた。
後編では、社長の吉田氏のこれまでの経歴や、「まんが王国」のサービスを拡大していくなかで経験した失敗談などを語ってもらった。
商社のIT部門からベンチャーへ転職
吉田氏は、商社勤務を経て現在のビーグリーの前身であるベンチャー企業に入社した。転職に迷いはなかったのだろうか?
「商社のIT部門に所属していたのですが、当時は携帯電話業界が飛躍的に伸びていたり、インターネット回線の速度がどんどん速くなっていったりという時代で、日本でもアメリカでも、ITベンチャーが注目さていました。周囲の先輩にもそういった事業に携わる人は多かったので、商社を辞めて転職すること自体はとくに抵抗はありませんでした」
商社時代にはアメリカのベンチャー企業と取引することもあり、そこで目撃した出来事が、転職の後押しにもなったという。
「そこは、取引を始めた時に社員50人程度の小さな企業でした。非常に競争力のあるネットワーク機器を作っていて、その商品を日本のキャリアなどに販売すると飛ぶように売れる。それから2年くらいで500人くらいの規模にまで大きくなったのですが、そういったダイナミズムを目の当たりにしたことで、自分もチャレンジしてみたいという意欲が高まって転職を決めました」
出版社で「君たち何者?」扱いも
当時はADSLなどの通信技術が大きく伸びていた時期だったこともあり、商社での業務はインフラ周りが中心だったそうだ。しかし、吉田氏は当時からコンテンツビジネスの重要性を感じていたという。
「業界はADSLだ、ブロードバンドだと盛り上がっていましたが、そういった技術の普及についての議論になったときにいつも思っていたのは、『それで、結局中に何を流すのか?』ということです。キラーコンテンツやキラーになる使い道を考えていくことが大切ではないかと思っていましたが、商社時代は機会に恵まれることがなかったため、転職後、漫画という形でコンテンツに携われることになったとき、これはチャンスだな、やってみようと感じました」
当時はまだ電子コミックがまったく普及していない時代。サービス開始当社は苦労も多かったそうだ。
「市場が小さいことに加えて、我々の前身の会社も海外に本社を持つ日本法人だったということもあり、出版社に営業に行っても『君たち何者?』という反応をされてしまうことが多くありました。事業内容を理解してもらうことができず、ましてやビジネスにつながる雰囲気にはなりませんでしたね」