「モバイルPASMO」がiPhone対応。Suicaと何が違うのか
10月6日、交通系ICカードの「モバイルPASMO」がiPhone向けのアプリ提供を開始した。同時に、Apple PayからもPASMO決済を利用できるようになった(Androidでは3月にすでにサービスを開始している)。
事情を知らないSuicaユーザーならば、「えっ? これまで使えなかったの?」という感想を抱いても無理のないところだ。交通系ICカード最大手の「モバイルSuica」は2006年にサービスを開始、2016年にはApple Payにも対応しており、モバイル全般においてPASMOは遅れを取っていた。
これを不便に感じていたPASMOユーザーは少なくなかったが、機能面でいよいよSuicaに追いついたことで、交通系ICカードの全国競争は新たな局面を迎えると見られている。
「パスネット」から生まれたPASMO
そもそも、ある人がSuicaとPASMOのどちらを使っているかというのは、単純に住んでいるエリアによる部分が大きい。
JR東日本がSuicaのサービスを開始したのは2001年。JR東日本には中央線や山手線など、世界でも最大規模の利用者数を抱える通勤路線があり、非接触型ICカードによるスムーズな改札処理が望まれていた。
Suicaの成功を見た他社局でも、同様のICカードを作ろうという動きができた。首都圏の場合にはすでに磁気式の「パスネット」という枠組みがあり、都営地下鉄・東京メトロ(旧・営団地下鉄)・西武鉄道など、22社局が参加していた。
これらのパスネット加盟社局が中心になって2007年に始まったのが、Suica最大の対抗馬「PASMO」である。したがって、首都圏の私鉄・地下鉄の沿線に暮らしている人は、自然な流れでPASMOユーザーになっている。
モバイルPASMOを利用すべき人は?
ただし、PASMOの機能性はSuicaに劣るものだったため、SuicaとPASMOの共通利用が可能となってからは、あえてSuicaを選ぶ私鉄沿線の住民も多かった。モバイル対応の早さも、Suicaが選ばれる理由のひとつである。
しかし共通利用が可能とはいえ、「モバイルSuica」に定期券を載せるためには、経路のどこかにJR東日本の路線を含む必要があった。
このたび実現した「モバイルPASMO」では、首都圏の私鉄・地下鉄だけの定期券を載せることができるため、沿線住民にとってモバイルPASMOのデビューは朗報といえそうだ。