新社会人よ『半沢直樹』を“おっさんの話”と一蹴するなかれ/常見陽平
コロナパンデミックはまだまだ余談を許さない状況であるのは明らかだ。7月に入ってから都内では、新規感染者数が200人を超えることも珍しくなくなり、緊急事態宣言が再度発令されるのかと、不安をおぼえている人たちも少なくないだろう。
そんな状況ではあるが、ビデオリサーチの調査によれば、1日を通しての世帯視聴率が4月時点で前年同月比よりも高くなっているようだ。
ここに来て撮影がストップし、延期になっていた新作テレビドラマも相次いで放映開始されている。私が注目してみたいのは、やはり『日曜劇場「半沢直樹」』(TBSテレビ/毎週日曜21時〜)だ(寄稿:常見陽平氏【働き方評論家】)。
世相に果たして合うのか
架空の銀行・東京中央銀行を舞台にした『半沢直樹』は、2013年7月期に放映された大ヒットドラマである。銀行内の派閥争いに巻き込まれる主人公・半沢(堺雅人)を中心にした人間模様は、ビジネスパーソンであれば誰もが共感できるであろう会社員の悲哀や組織の在り方を映し出し、多くの視聴者の心をつかんだ。
劇中で半沢が発した「倍返しだ!」の名ゼリフや、半沢の因縁の相手・大和田(香川照之)が土下座をするシーンなどは、おそらく観たことがない人たちでも知っているほどの社会現象となったのも記憶に新しい。
ただ、コロナ禍での放映延期が発表されたとき、私は正直「果たして今回の新シリーズが支持されるのか」と疑問を抱いていた。
前シリーズは2013年の放映であったが、当時は世相として、東日本大震災から社会が立ち直り始めていた時期で、明日への希望を見出していくような空気感に社会が包まれていた。一方で、今は誰もが感じられるとおり、社会は不安の最中にいる。