東大中退ラッパー、SNSに広がる香港デモ動画に何を思う?
東京大学中退という異色な経歴を持ちながら、明晰な頭脳を生かしマルチに活躍するラッパー・ダースレイダー(42歳)。
これまでは20代から寄せられた人生相談に答えてきた彼だが、この連載では現代日本で起きている政治や社会の問題に斬り込む。今回のテーマは「SNSと政治」だ。
自身のTwitterでは時事問題に対する考えを盛んに発信し、ときに政治家にも噛み付き、ツイートへの賛否の声も真っ向から受けるダースレイダー。政治や社会とSNSの関係について、どのように考えているのだろうか?
SNS誕生以降のポピュリズム
ダースレイダー:SNSが普及した以降のポピュリズムは、とりあえず“言ったもん勝ち”みたいなところに逃げ切る手法。正しいか正しくないかっていうよりは、そのときの感情任せに言ったもん勝ち。「正しくないと言われても俺はそう思ってるんだよね」って開き直るみたいな。
SNSはそういった心理を生みやすいと分かっていれば、いちいち真剣に受け止めたりしないで「そういう考え方にとらわれちゃう人なんだな」と思える。
SNSの良いところは、現場で何が起こっているのかをその瞬間に情報発信できること。『ラッカは静かに虐殺されている』っていうドキュメンタリー映画にもなっていますが、シリアのイスラム国に支配されたエリアにいるジャーナリストたちが、SNSを使うことで現地の状況をリアルタイムで発信していた。
香港の民主化デモ映像に何を思うか
ダースレイダー:今、基本的に支配勢力が情報のシャットアウトを狙っているのに対し、その抵抗手段としてSNSで世界に発信することができるというのは、ジャーナリズムの観点からいって、とても大事なことだと思います。
例えば香港で起きているデモにしても、実際に起こっていることを目にすることで、世界中の人がそれを知る、あるいはそれを拡散したり、シェアしたりすることで、何かしらの影響力を与えられる。
実際にデモが効果を上げ始めてから、中国側の規制が強くなっている。中国側の規制が強くなっているという事実そのものを周知させることは大事なんだけど、これを知ったところで何ができるかは、人それぞれ難しい面があるよね。
まずは知って話を聞いて、そういった社会を自分は是認するのか、これは違うと思うのか、というのは外からでも声を上げることができるでしょう。それによっては当事者、例えばシリア、香港にいる人たちが自分たちは孤立していないと感じることができる。これがすごく大事なことだと思います。