辞めさせない、自腹買いさせる…残酷アパレル企業を辞められた奥の手とは
ブラック企業の定義はいくつかありますが、なかでも従業員に金銭的な負担を強いることで問題視されているのが“商品の自腹買い取り”。
会社側は「強制ではない」と主張しますが職場の人間関係などを考えると、買い取りを拒否できる雰囲気ではないようです。
接客用に自社ブランドの服を季節毎に買い取り
2年前までアパレル店員として働いていた原田尚之さん(仮名・29歳)も季節ごとの自社商品の買い取りは、「最後は苦痛でしかありませんでした」と振り返ります。
「もともとファッションが好きで始めた仕事なので、最初はいち早く新製品を手に入れることができて満足していました。ただ、このショップのブランドはデザイン的にあまり変わり映えがせず、悪くいえば似たり寄ったりの服ばかり。
社割で3割安く購入できるとはいえ、店頭での棚替えの時期は50%や70%オフで売ることもある(笑)。だから、よくよく考えるとちっともお得じゃないんです」
店頭では自社製品を着て接客を行っていたため、着替え分を合わせると季節ごとに15万~20万円ほどの買い取りが必要だったといいます。
「でも、会社の規則には、《接客時は自社製品を着用すること》とは一言も書かれていない。明文化されていないのに事実上のルールになっている。そこは会社がずる賢いというか卑怯だと感じました」
買い取っても着なくなった服はオークションサイトで処分
しかも、すでに販売していない古いモデルの服は、店頭で着用しないよう本部から口頭で伝えられていたとか。
「着なくなった服が自宅の押し入れに溜まっていくだけなので、二束三文ですがメルカリに流して定期的に処分していました。でも、売り上げが大きく落ちた年があったんです。
それを補填するために年間100万円くらいの買い取りを強いられたことがあったんです。当時、年収は370万円ありましたが、実質的には270万円。さすがにこれではやっていけないと思い、本部の担当者に辞職を伝えたんです」
ところが、退職届は受け取ってもらえなかったそう。
「『人手が足りないからしばらく待ってほしい』と言われ、その後も同じようにはぐらかされてズルズルと2年近く経ってしまいました」