猫が店員の本屋さん。猫好きサラリーマンが実現した夢と働き方
「それまでやってきたことを無駄にしない」
――ある程度経験を積んで、中身も成熟してからのほうがうまくいきそうですね。
安村:若くてもできる人にはぜひやっていただきたいですけど、僕自身の若い頃を振り返ると到底無理ですね。仮にいまと同じ貯金や能力があったとしても、20代ではやってなかった思います。
それまでやってきたことを無駄にしないように次に生かし続けていけば、いつか本当にやりたいことが見つかったり、蓄積されたものを使って何かをしたりするタイミングがいつか来ると思うんですよね。自分はこの年だからできたなって思います。
――本屋を開業して1年以上経ち、実感している気持ちの変化はありますか?
安村:「会社を辞めたい」という気持ちがなくなりましたね。いまは「パラレルキャリアです」なんてカッコよく言ってますけど、正直に言うと最初は「会社辞めたい」「とりあえず本屋やってみて軌道に乗ったら会社辞めよう」なんて甘い考えがありましたから。
パラレルキャリアで「会社辞めたい」がなくなった理由
――「会社辞めたい」がなくなったのは、やはり精神的に満たされたから?
安村:そうだと思います。満たされて、「別に辞めなくていいや」って気持ちになれたんですよね。といっても大げさなものではなく、何か没頭している趣味があって、週末にそれを楽しんだら「また月曜から会社頑張ろう!」となる会社員の人ってよくいますよね。それと僕のいまのパラレルキャリアって、そんなに変わらないと思うんですよ。
――なるほど。副業ではなく趣味寄りなんですね。
安村:そう。だからやっぱり副業とは違うなあって。まあ、本屋開業のために購入した自宅兼店舗の住宅ローンがのしかかっているので、現実的に会社をやめられないというのもあるんですけど(笑)。ローンを組むときに会社員の社会的信用を実感したので、こんな貴重な信用担保を放棄するのはもったいないなともいまは思っていますしね。
――新しいことを始めたことによって、会社員の価値を再認識できたんですね。
安村:そうなんですよ。会社員でいてよかったと初めて思った瞬間でした(笑)。
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⇒ ネットで270万円調達して猫本屋を作ったサラリーマンの、したたかな開業戦略
<取材・文/持丸千乃 撮影/山川修一>