韓国4大財閥の従業員も副業サイトに登録!「本業の収入だけでは生活できない」背景とは?
近年、生活費や将来の不安に備えるため、副業を希望する人が増加しています。また、収入を補うだけでなく、新たなスキルを身につけたり、趣味を活かしたりする場としても注目されているようです。
そんな副業に関するさまざまな情報をお伝えしてきました。今回は、お隣の国・韓国の副業事情に関する調査結果を紹介します。
全体の副業率は低いが若者の間で副業が注目
何かと騒がしいお隣の韓国。K-POPアイドルから、大統領に至るまで、テレビや動画コンテンツで韓国人を見ない日はないと言っても過言ではない今日このごろだと思いますが、副業についてはどうなのでしょう。
結論から言えば、調査結果によって細かい数字が変わってくるものの、韓国でもこのところ副業がかなり注目されているという点は、どの調査結果を見ても同じです。
例えば、韓国の政府機関で、国内の統計情報を収集および分析し、ならびにまとめる仕事をする統計庁の「経済活動人口調査」最新版データがあります。
2024年(令和6年)4月にこのデータを報じた「世宗聯合(セジョン・ヨンハプ)ニュース」によると、若年層(15~29歳)の副業従事者の増加率は前年度比30.9%増と、全年代の中で最も大きくなっています。
もちろん、実際の副業率は、就業者全体の中で1.97%にとどまっていて、日本の副業率5~10%と比べても低いです。ただ一方で、フードデリバリーの配達員、インターネット上の仕事などを始める若者が目立ち始めている現象も間違いなく確認されるそうです。
同様の調査は、他にもあります。韓国で知名度の高い求人新聞「フリーマーケット」が1,328人の有職者に行った調査です。
同調査を紹介した、韓国最大の日刊英字新聞「The Korea Herald」によると、アンケート回答者(有職者)のうち26.8%が副業に取り組んでいるといいます。さらに、55.3%の人が、何らかの仕事を増やそうと検討しているとの話。
「Career Day」という韓国の副業プラットホームの最高経営責任者(CEO)の言葉も興味深いです。
同最高経営責任者にインタビューした、マレーシアを拠点にする「HR Asia」の2024年(令和6年)3月19日の記事によると、Career Dayには2万人の登録者が存在し、その中には、韓国の4大財閥(チェボ)に勤務する人も4,610人登録しているといいます。
韓国の4大財閥、すなわちサムスン、現代自動車、LG、SKの各グループ企業は、日本でも知られる大企業です。ある意味で「勝ち組」の会社員たちが副業サイトに登録するのですから、副業熱の盛り上がりは確かに存在するといえそうです。
本業の収入だけでは生活できない
では、どうして韓国で近年、副業の盛り上がりが確かに見られるようになってきたのでしょうか。その背景には、いくつかの背景があるようです。
複数の専門家によると、2018年(平成30年)に導入された週52時間勤務制(日本の週40時間勤務制度に類似)、新型コロナウイルス感染症拡大を機に広まった在宅勤務と業務量の変化、インターネット上で仕事を見付けられるプラットフォームの発達などがベースにあり、物価上昇に伴う経済的な苦しさが、働く人の副業率を押し上げているとの話。
例えば、上述の求人新聞フリーマーケットの調査によると、副業中の人のうち55.1%が、本業の収入だけでは生活できないために副業を始めたと回答しています。
副業を検討していると回答したアンケート協力者のうち43.3%は、副業を検討する理由として、本業の給料だけでは暮らしを維持できない生活環境を挙げています。
韓国の日刊新聞「中央日報」の取材で高麗(コリョ)大学の教授は、週52時間勤務制の導入により、延長勤務や深夜勤務が制限され、超過労働の分で低い給与を補っていた零細企業に勤務する労働者たちの存在が、副業率を高める一因になっていると指摘します。
SNSやYouTube関連の仕事が人気
人気の副業の内容を詳しく見ると、どういった業務が上位に並んでいるのでしょうか。例えば、求人新聞フリーマーケットの調査によると、
- ソーシャルメディアやYouTube関連の仕事(20.2%)
- イベントやセレモニーでの作業(17.4%)
- レストランでのサービス(11.2%)
- デリバリー業務(9%)
などが、人気の副業職種として挙げられています。
3年前と少しデータが古いですが、中央日報が紹介したアンケート調査では、
- 日雇い労働(20.9%)
- お店の管理やサービス業(17.4%)
- 在宅事務のアルバイト(14.4%)
- データラベリング(12.8%)
- 家庭教師・教育(12.2%)
- 代行運転(6.4%)
といった結果も出ています。
日本でも盛り上がりを見せる副業は、お隣韓国でも盛り上がりを見せている様子。何らかの副業を探している人は、お隣韓国で流行する副業にも注目してみると、何らかのヒントを得られるかもしれません。
[文/坂本正敬]
[参考]
※ 若者・40代中心に副業する人が急増 良質の仕事不足で=韓国 – 聯合ニュース
※ Majority of Korean workers engage in or consider side gigs – The Koera Herald
※ More South Koreans are taking up side gigs as remote work – HR Asia
※ Uber CEO says growth in South Korea promising despite underdog status – Reuters
※韓国、57万人がトゥー・ジョブの時代 | Joongang Ilbo | 中央日報