よかれと思い美人宿泊客とLINE交換してしまった新人ホテルマンの悲劇
女性が飲んでいるバーに向かうと…
「既読もつけてしまったし、無視するわけにもいかない」そう自分に言い訳をして、退勤後に自分が教えたバーに向かうことにしました。
“何か”あるといけない、そう心の何処かで期待した源太さんは、念のため、手洗いで顔を洗って髪の毛を整え、さらには歯まで磨いておいたそうです。厄介なことになったと思いながらも、どこか足取りが軽い源太さん。
源太さんは彼女と別れてからしばらく女性と遊ぶ機会に恵まれておらず、“何か”を期待してしまっていました。
「そりゃあ健康な男ですから、やっぱり女性から呑みの誘いがあったら嬉しくなっちゃうし、期待してしまいますよ、仕方ないじゃないですか」
身だしなみをチェックしてから、源太さんが教えたバーに向かうと、例のお客さんがカウンターに腰掛けていました。源太さん曰く、まるでグラビア写真のように美しく、その一帯だけが華やいで見えたそうです。
しかし、彼女の隣の席には鼠色のスーツを着た冴えない中年男性が座っていました。何事かと思って怪訝な視線を向けるとその男性は、
「キミ、お客様と連絡先交換しちゃいけないって知らないのかい?」
と一言。
押しの強い女性の誘いの本当の目的
「その男性は名刺を取り出して、俺に渡してきました。それを見てびっくり。なんと本社の総務部長だったんです」
そうです。これは本社の総務部が企画した「業務の抜き打ちチェック」でした。総務部が実際にホテルに宿泊し、従業員がお客様に正しい対応をしているのかを調査する目的だったのです。
「今日のところはもう帰っていいよ」と総務部長は源太さんに冷たく言い渡します。呆然と立ち尽くしているとその女性は彼を一目見て、手で小さく「ごめんね」のサインを作り、少しだけ舌を出して微笑みました。
「その姿もすごくキュートで、騙されたのに不思議と嫌な気分はしませんでした」
この話は後日、総務部長を通してホテルの支配人の耳に入り、源太さんは大目玉を食らうことになったそうです。
それにしても本社は意地の悪い企画をするものです。源太さんのような年頃の男性だったら引っ掛かってしまうのも無理はありません。皆さんはくれぐれも社内規則を遵守するよう心掛けましょう。
<文/ベルクちゃん>