人事部長の悩みは“使用されない”男女共同トイレ「女性の理解を得るのが難しい」
男性と女性の共同のトイレが職場に設置された。あなたは使用するか……。今回は実際に起きた事例をもとに、社内における「性」について考えたい。本記事の前半で具体的な事例を、後半で人事の専門家の解決策を掲載する。事例は筆者が取材し、特定できないように加工したものであることをあらかじめ断っておきたい。
事例:トイレ設置が招いた職場トラブル
日本を代表する自動車部品メーカー(社員数6500人)の人事部長を4年前から務める小林税子(仮名・52歳)は、今、ある問題にぶつかっている。
3年前に全社員を対象にした職場環境についてのアンケート調査の自由記述欄に、本社勤務の外国籍の男性5人が「社内に男女共同トイレを設けてほしい」と書いていた。それぞれに人事部長としてヒアリングをすると、5人とも「自分は男性ではあるが、心は女性。女性のトイレを使いたい」と答えた。
それを受け、役員らとも話し合いのうえ、共同トイレを本社ビル(自社ビル)に3か所設けた。障がい者雇用やセクハラ防止に40年以上前から熱心に取り組むなど、人事には進歩的な会社ではある。
“使用されない共同トイレ”をどうする?
だが、この3年間、このトイレを使う女性はほとんどいない。昨年、職場環境についてのアンケート調査をした。20~30代の女性と思える社員10~20人が、こんなことを書いていた。
「安心して共同トイレに入れない」「外国籍の男の人たちが共同トイレにしてほしいと言い、設置されたようだが、それ以前まで男子トイレを使っていて、なぜ突然、共同と言い始めたのか?」「トイレの中の生理用品などは、大丈夫なのか?」
人事部長の小林は“使用されない共同トイレ”を今後どうするか、と考えあぐねている。
「トランスジェンダーに比較的寛容と言われる欧州に当社は工場やオフィスを設け、多数の現地人を雇っている以上、この問題には真剣に向かい合うべきと思っています。とはいえ、日本国内に勤務する多くの女性社員からの理解を得るのが難しい一面があるのです。どうすればいいの?」