楽天「不調の元凶」に改善の余地はあるか。異例の“高利回り社債”発行も
ゼロ円プランの廃止で課金ユーザーは?
目先の事業資金が底をつきそうだったとしても、将来的に儲けが出そうであれば大きな問題にはなりません。しかし、いまだ先行き不透明な状態が続いています。不調の元凶はモバイル事業です。
楽天のモバイル事業2022年7-9月の売上高は457億円。営業損失は1117億円でした。売上高は前年同期間の45.0%増加していますが、損失額の大きさに比べて十分に伸張しているようには見えません。しかも、2022年3Qの売上高は2Qと比較して0.6%減少しています。
楽天モバイルは2022年7月にゼロ円プランを廃止しました。楽天は2022年9月に課金ユーザー数が大幅に増加したと発表しています。しかし、3Qの実績を見る限り、ゼロ円プランを廃止して課金ユーザーを増やした効果は限定的。
ゼロ円プランの廃止は楽天モバイルの切り札です。目覚ましい成果が出なかったことは、経営陣にとって痛手だったに違いありません。
プラチナバンド効果は果たして…
楽天がモバイル事業の次なる成長ドライバーと期待しているのがプラチナバンド。楽天モバイルはつながりやすい周波数帯を持っておらず、展開するエリアが限られていました。ユーザーからも接続環境が悪いという声が多数上がっており、加入者の離反要因のひとつでもありました。
プラチナバンドは、ビルの中や離島にもストレスなく電波を飛ばすことができます。楽天は「2024年3月からの使用開始を目指す」と発表しました。新興企業らしい勇み足のアピールです。もともと、プラチナバンドの再割り当てには既存事業者が猛反発していました。移行期間に10年かかり、工事費用として1000億円発生するとしていました。その負担を楽天に求めていたのです。
2022年11月8日に総務省が報告書案を公表し、移行期間は5年、移行に伴う費用は既存事業社が負担するとしました。これでおおむね決着がついたため、楽天はプラチナバンド計画が順調に進んでいることを急いで発表しました。
しかし、料金プランで他社との差別化が図りづらくなった楽天モバイルが、プラチナバンドで競合と同じ電波環境を得たからといって、課金ユーザーが急増して収益が改善するかは疑問。手を付けてしまったモバイル事業の収拾がつかずに、突き進むしかなくなっているようにも見えます。
<TEXT/中小企業コンサルタント フジモトヨシミチ>