「アットホームな職場」がなぜ“ブラック”に感じるのか?居心地が悪い職場のワナ
もし職場にロールモデルが見つからなければ…
また、近しい上司や同僚に尊敬できる人がいなかった場合、「単なる役割分担」とドライに割り切りやすくもなります。「別にこの人のようになりたいわけじゃないから」と、無理に合わせようとするプレッシャーから解放されます。
あるいは、社外に目を向けて、他社や他業界に尊敬できるロールモデルを見つける方法もあります。会社の垣根を越えて、師となる人を見つける。そんな職場の境を越える「越境思考」も、職人として自らを成長させるために極めて重要な考え方です。
このように人間関係ひとつとっても、上司・部下の関係に閉じ込められていた視野が、だんだんと広がっていきます。
さらに、仕事に対しても、「言われるがまま」の考え方から変わっていきます。職人ならば、仕事を通じて、自分の技量を上げていかなければなりません。効率やクオリティを試行錯誤しながら向上させていけば、その積み重ねは、着実に仕事人としてのキャリアに繋がります。
働き方が多様化すればチャンスも広がる
こうした仕事への向き合い方は、非正規社員やアルバイトであっても、目に留まるものです。職人として素晴らしい働きぶりをしている人が、非正規社員から正社員に抜擢されるケースもあります。今後、働き方が多様化し、企業が社外の有識者や能力のある人を積極的に登用するようになれば、チャンスはますます広がっていくはずです。
このように自分を職人(クラフトマン)と捉え、主体的に仕事に向き合う働き方を、「ジョブ・クラフティング」と言います。働き手の生産性を上げる方法として、アメリカのイェール大学経営大学院のエイミー・レズネスキー准教授とミシガン大学のジェーン・E・ダットン教授が提唱した理論です。
そして、このジョブ・クラフティングを考えた場合、大きな問題がひとつ浮上します。
それは「尊敬できる師匠が見つかるかどうか」という問題です。主体的に動けと言われても、手本がなければ、なかなか難しいもの。中には、ひとりで考えて動ける人もいるかもしれませんが、それはレアケースです。職場に尊敬できる人、ロールモデルが多ければ多いほど、ジョブ・クラフティングはしやすくなります。
また、職場の環境や仕事の仕方の改善など、ひとりでは限界のある物事に対しても、尊敬で結ばれた働き手同士が連携すれば、変えていける可能性が広がります。