ユニクロが逆転首位に。危機の「大手下着メーカー」が“脱下着”を目指すワケ
ユニクロが下着界の黒船になった理由
2020年に国内女性下着市場でユニクロがワコールを追い抜きました。ユニクロが女性用下着を本格化したのは2003年。当時、ブラジャーはワイヤー入りのものが主流。しかし、バストを寄せて形を保つという女性の価値観は薄れ、着心地を重視しはじめていました。ユニクロの下着は新たな価値観にフィットします。
革命的だったのが2008年に発売したブラトップ。下着と部屋着を一体化させ、女性のライフスタイルに変化をもたらします。
ユニクロはコロナ前からシェアを高めており、市場を侵食していました。ワコールは、従来のブランドに固執し、革新的なアイテムを打ち出すことができませんでした。確実に変化する女性の価値観やライフスタイルに、ついていけなかったとも言い換えられます。
“ど真ん中”から、ずらした市場に
ワコールホールディングスは、2022年6月3日に中期経営計画を発表しました。「VISION 2030」という経営戦略の大注目ポイントは、国内ワコール事業の成長ドライバーに下着以外を位置づけていること。健康領域の事業化を進め、売上高200億円、営業利益10%を目指すとしています。ただし、健康領域が何を示すのかの具体的な言及はありません。
ワコールはすでにシニア向けの下着や、介護がしやすい部屋着などを扱う「らくラクパートナー」というブランドを持ち、日本橋三越に直営店を出店しています。
このように、女性用下着の“ど真ん中”ではなく、ターゲットをずらした市場を開拓するものと考えられます。
この経営戦略を加味して考えると、250人(ワコールの全社員の3.6%)の希望退職者を募ることも納得ができます。周辺領域を開拓するうえで、女性用下着の開発に集中していた人材は手に余るということなのでしょう。
気になるのは、このような希望退職者を募集すると、市場価値の高い人が応募する傾向が高いこと。市場価値の高い人とは、競合他社が欲しがるような人材です。