会社に内緒で独立計画を進めるも、信じていた後輩がまさかの裏切りを…
信じていた後輩が、実は……
しかし好事魔多し。
「信用していたうちの一人が社長のスパイだったんです。水面下に計画していたはずなのに、情報が筒抜けになっていました。弟のようにかわいがっていた存在だっただけにショックはひとしおでした」
独立計画が社長の逆鱗に触れ、制裁措置として田中さんの編集部はボーナスが支給されないことになってしまいます。
さらには出社時間に1分遅刻しただけで始末書を数枚書かされたり、自分のデスクの蛍光灯だけ替えてもらえなくなってしまったそうです。
不退転の決意で独立。現在は?
当時の状況について田中さんはこう話します。
「今考えるとむしろ良かったのかもしれません。少しだけ残っていた後ろめたさが吹っ飛んで、不退転の気持ちがより強くなりました。でも最後のボーナスで南の島に行ってリフレッシュしようと思っていたので、それだけは残念でしたけど(笑)」
万全なタイミングでの独立とはいきませんでしたが、在職時から多方面に顔が利いた田中さんは人脈を存分に活かし、今のところ経営は順調だといいます。
「モットーは『社員が辞めない会社』です。古巣を反面教師にして、些細なことでも部下の意見は聞くようにしていますし、なるべく残業のない環境つくりを心掛けています」
そう語る田中さんですが、自らは終電まで会社に残る毎日を過ごしています。
「特にやることがなくても、なぜか不安になってしまい、この時間まで帰れないんですよ。でも僕はお酒が飲めないから、夜飲みに行きたいとは思わないし、仕事が趣味なので、今のところ不満はありません。週末には家族と過ごせる時間もありますから」
― 特集・Around30解雇のリアル Vol.6 ―
<取材・文/蒲須坂正男 イラスト/真船佳奈>
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