「5%に仕事が集中」現役声優が明かす、コロナで顕在化した業界の懐事情
コロナ禍で密な収録が見直された弊害
声優業界では社会の縮図のような格差がより顕著であった。そして、その傾向はコロナ禍における“分散収録”でさらに加速しているようだ。
「コロナ以前の収録は、出演する声優が原則全員揃い、アニメであれば2~4時間程度、吹き替えでも4~5時間程度、映画となれば丸一日、時には12時間以上をかけて収録していました。しかし、コロナ禍で人が集まることが難しくなった結果、3~4人程度での分散収録となり、声優が1話にかける時間が大幅に減少しました。
そのため、人気の声優が1日に3~4本と掛け持ちすることが以前よりもさらに増加。第2~3候補の声優が役を得る機会は減少しました」
人気声優がブッキングしやすくなり、スター候補である若手の育成機会が失われている。
全て不景気に起因している
これまでの話で声優として安定した活動することの難しさが十分伝わった。声優業界に改善点はあるのか聞いた。
「日本は他の先進国と異なり、物価は上昇しているのに賃金が上がらない“スタグフレーション”です。つまり経済的に低迷している状況ですので、依頼をする側のアニメやゲームの制作会社の予算自体が当然減少しており、必然的に声優へ支払う予算がとても少なくなっています。
そうなるとクオリティよりも予算重視のキャスティングとなり、声優自身もランクを下げざるをえなくなり、安定した生活を手に入れることは難しくなります。また、ランクが適用されないゲームなどの予算も同様に少なくなっていますから、数をこなさなければとても食べてはいけません。
さらには、洋画の興行成績の不振、それに伴うソフトの販売数低下により、日本語ローカライズの減少・消滅が進んでいます。これらのことも全て不景気に起因しているため、安定して声優として活動するためには、まず不景気の改善が急務です。特に2023年10月施行予定のインボイス制度はより景気を悪化させる制度ですので、『阻止しないといけない』と考えています」
日本経済の低下が、アニメをはじめとしたエンタメ産業の質の低下に繋がってしまうかもしれない。
<取材・文/望月悠木>