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「5%に仕事が集中」現役声優が明かす、コロナで顕在化した業界の懐事情

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 声優は今では若者が憧れる人気職になったが、スター声優になるどころか、最低限の生活さえ送ることはとても困難である。3人の声優(咲野俊介、岡本麻弥、甲斐田裕子)が立ち上げた有志グループ「VOICTION」@VOICTION)が9月29日、声優を対象にした「声優の収入実態調査」を発表した。

声優

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 その結果によれば、7割が年収300万円以下、4割が年収100万円以下、という衝撃的な実情が明らかになった。実に7割もの声優が安定した生活を送れていないことには驚いた。同グループ広報を務め、自身も声優として活動する福宮あやの氏に声優業界の厳しい懐事情を聞いた。

ランク制度と不況の関係

 改めて食うことが難しい職業であるとわかったわけだが、調査結果だけではいまいち声優の実情にピンとこない。声優業界の懐事情について聞くと、「メインキャストを任されたからといって、ギャランティが高いわけではありません」(福宮氏、以下同じ)という。何やら特殊な事情があるようだ。

声優のギャランティは、アニメや吹き替えの場合は“ランク制度”というもので一律に決まります。これは放送媒体、本編の時間の長さなどの法則に従って変動するのですが、新人の場合、そのランクに入る準備段階として“ジュニア”という扱いになり、収録時間の長さなどに関係なく、『1本の収録あたり1万5000円』が事務所に入ります。

 そこから2~3割が事務所の手数料として、さらに源泉徴収税を引かれた額がギャラとして、個人へ入金されます。最近は仕事を得るためにはランクを上げることは難しくなり、さらにはランクを下げる声優も珍しくありません」

年を重ねて人気がなくなることも

福宮あやの氏

福宮あやの氏

「アニメの主役やメインヒロインを複数やるほど人気があれば、本編の収録だけでなく歌の収録、グッズ展開、イベント出演などの仕事も増えるため、年収はもっと高くなることも多いです」

 やはり夢のある職業ではある。とはいえ、継続して売れ続けなければいけないため、やはり生き残りは難しそうだ。

1度主役になったとしても、翌年以降に出演数が減ればその分だけ収入は減ります。例えば、20代の時は人気があって課税事業者だったけれど、歳を重ねて出演機会が減って免税事業者に戻る、というケースも残酷ですが、決して低くない確率で起こり得ますね。もちろん、今は出演数が少なくても来年には急増するということもあり得る世界ですが」

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