普通の子が“ホス狂い”になるまで。恐るべき「ホストの営業力」を解く
ホストとホス狂いは、戦っている
女性たちは、疑似恋愛であることには自覚的でありながらも、心のどこかでは「自分だけは特別」と胸をときめかせる。その恋愛のような喜びや日々の活力を得る見返りとしてホストを支える(つまりお金を落とす)のだと大泉氏。
「ホストとホス狂いの関係は、しばしば疑似恋愛的と言われます。でも、取材していく中ではときに『戦っている』と感じられる空気感すらありました。『自分がこれだけ費やしたから、相手は今度は~~してくれる』と見返りを駆け引きしている側面もあります」
その結果、駆け引きに消耗した女性が病み、ホストが刺されるような事件が引き起こされるのだろうか。
「イケメンに課金するという意味では、推し活との共通点もあります。とはいえ、自分の行動の対価の“見返り”を駆け引きするところは、推し活とは一線を画すと思いますね」
気になるホストのセカンドキャリア
夜の世界で培った“営業力”をホストたちは、どのように活かすのか。
「ローランドさんや手塚マキさんのようにプレイヤーからカリスマ経営者になる道は、レア。大学生なら一般企業に就職したり、社会経験があれば不動産の営業に転職するという例もあるようですね」
冒頭で挙げたような“億り人”も増えているとはいえ、一説には100万円以上稼ぐホストは1割という節も。
「ホストクラブではボーイや内勤が掃除するのではなく、売上げ額が低いキャストが掃除をする慣習もあり、“掃除組”のままで終わるホストもたくさんいます。最近は若い女性客も多いので、30歳を越えたらホストを続けるのは厳しいようです」
ホストかホスト以外か……。これほど、競争の激しい世界はないのかもしれない。
<取材・文/アケミン 編集/ヤナカリュウイチ(@ia_tqw)>
【大泉りか】
1977年、東京都生まれ。SMショーのモデルやキャットファイターなど、アンダーグラウンドな世界にどっぷりと浸かった20代を過ごす。2004年に『ファック・ミー・テンダー』(講談社)でデビュー。漫画の原作なども手がけ、20冊以上の著書を持つ。