削れる経費は皆無…「記録的円安」で運送界の“名物社長”も不安の声「燃料費はほぼ倍に」
止まらない円安。中小企業はコスト増加に悲鳴を上げている。客離れを心配して、コストを価格に転嫁できないなか、円安倒産が記録的な件数に。このまま倒産件数は増えるのか? 円安に苦しむ現場の声を届ける。
削れる経費は皆無。売り上げの2割が燃料費
ロシアのウクライナ侵攻と円安の影響でガソリン価格は高止まり、運送業界への影響も深刻だ。東京商工リサーチによれば、道路貨物運送業の倒産は2022年5月までの累計が94件、前年同期の1.4倍増という結果に。
「燃料費は通年のほぼ倍、この4か月は、売り上げの2割弱を燃料費が占めていますね」。静岡県浜松市で運送会社「エイコー運輸」を営む鳥海祐二代表(@yuji_toriumi)は、ため息をつく。
「タイヤやオイル、トラック価格も上がり、周囲の運送会社は軒並み赤字。削れる経費はもはや皆無、こうなったらトラックに水で走ってもらうほかないですね(苦笑)」
中小企業の荷主には厳しい現実
同社の主な業務は、自動車など大手メーカーの部品の工場間輸送だ。
「コンプライアンス遵守の大手は、価格転嫁にも好意的で、今回も荷主(メーカー)から値上げを提案してくれたのが不幸中の幸いです。しかし中小企業の荷主だと、そうはいかない」
過去に幾度も荒波は、運送業界に押し寄せた。
「リーマンショックでは社員に土下座して給与を下げたこともある。今回もなんとか耐え忍びたい。ただ現在は、運送業界の構造が複雑化し、全体が見えにくくなってしまった。軽貨物配送のギグワーカーは、ガソリン代などの経費は自腹。しわ寄せを受けているでしょうね」
“国の血液”とも称される運送業、滞らせてはならない。
<取材・文/週刊SPA!編集部>
【鳥海祐二】
エイコー運輸代表取締役。創業44年、従業員は32名。トラック運転手特化型20代限定求人サイトを運営。YouTube「声デカ社長 中小企業のZ世代採用術」でも情報発信している