JR列車初の防犯カメラが内蔵された新幹線は?否定的な声の中で狙いは
2022年は、日本の鉄道開業150年周年。新幹線も1964年10月に開業してから60年近くが過ぎた。出張に、帰省に、旅行に、欠かすことのできない交通手段だが、よくよく考えてみると、さまざまな謎が次から次へと浮かんでくる。
時速300キロで走る新幹線の窓は、小石が当たってもなぜ割れないのか? 北海道新幹線の先頭車両が長い理由は? そんな新幹線にまつわる謎の数々を解説した『最新版 新幹線に乗るのがおもしろくなる本』(著・レイルウェイ研究会)より、JR列車では初の防犯カメラが内蔵された新幹線などを紹介する。
乗客定員最大の新幹線が走っていたのは?
最もたくさんの乗客を乗せられる新幹線は、どの路線を走っている車両だろうか。こう尋ねられたら、ほとんどの人が「きっと東海道新幹線を走っている車両じゃない?」と答えるだろう。
東海道新幹線は、東京駅からは、新大阪方面に向かう新幹線が、5分おき、3分おきという短い間隔で出発している。しかも平日・休日、時間帯や季節を問わず、座席は大勢の乗客で埋まっている。東海道新幹線は常に大勢の利用者がいるために、「ドル箱」とまで称される。そう考えれば、当然かもしれない。
ところが、つい最近まで最も多くの乗客定員を誇っていたE4系の新幹線は、東海道新幹線ではなく上越新幹線を走っていた。2012年の7月以前、東北新幹線でも走っていたこのE4系は、1634名の定員で運行され、2021年に引退するまで高速列車では世界最大の定員数を誇っていた。では、どうして東北・上越新幹線で、それほどの輸送力の列車を走らせる必要があったのだろうか。
定員数世界最大の高速列車が誕生したのは、単純に利用者数が多いからだけではなかったようだ。まず、東北・上越新幹線の計画段階では、新幹線で通勤する乗客がこれほど増えるとは予想していなかった。新幹線定期が発売された当初、それほど多くなかった新幹線通勤者はその後増加。なかでも増えたのは、東北新幹線の東京~那須塩原間と、上越新幹線の東京~高崎間である。
東北・上越新幹線で定員が増えた、その理由
通勤客たちは、ほぼ同じ時間に新幹線を利用するから、その時間は混雑することになる。ところが、増発して対応しようにも、東京駅の東北・上越新幹線のホームは1面2線しかなかった。増発による対応は、限界にきていた。利用者の増加には、発着する列車の本数を増やすか、一度に輸送できる乗客の数を増やすかのどちらかである。
そこで、1編成の列車の定員を増やす方法がとられ、1994年には「Max」という愛称のE1系が登場した。これは全車が2階建ての12両編成で、定員は1235人、通勤時の混雑緩和には大きく貢献した。ところが、東北・上越新幹線は、時期によって乗客数が大きく異なり、繁忙期以外にE1系を運行させても空席が目立つばかりだった。
こうした東北・上越新幹線の特性を踏まえて考え出されたのが、E4系なのである。オール2階建ての8両編成で、定員は817名、1997年に営業運転が始まった。繁忙期には、16両編成で運行することで、定員1634名の新幹線が登場したのだ。混雑している時間帯や季節でも席に座れる乗客がぐっと多くなった。
では、「ドル箱」といわれる東海道新幹線の主力列車の定員はどれほどだろう。700系「のぞみ」の定員は、1319名。惜しまれつつ引退した2階建ての「Max」とは大きな差がある。