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井村屋「やわもちアイス」、3年の月日をかけた開発秘話と“海外への挑戦”

ビジネス

未完成の商品で営業に出向いたことも

 また、完全に量産化できない状態のままで、営業マンの商談も同時並行で進めていく必要性があった。やわもちアイスは、市場にない斬新なアイデアの商品だったため、多くのバイヤーの目に留まり、発売に向けての期待値はどんどんと高まっていく

 一方で商品化が進まず、先の見えない状況が続いた開発チームには、何度も営業マンから確認の電話が入ったという。「2004年に井村屋へ入社し、ずっと冷菓商品の開発に携わってきたなかで、もっともプレッシャーと苦労を感じながら商品開発を経験した時期だった」と嶋田氏は顧みる。

 こうした幾多の試練を乗り越え、2012年、発売にこぎつけたやわもちアイス「つぶあんミルク」。幸いにも、コンビニを皮切りに販路を拡大し、売上も順調に推移したという。そして2013年には「抹茶」「京きなこ」を発売し、現在も主力となっている“定番3品”が出揃った(きな粉は2016年にわらびもちに改良)

フレーバーの選定基準は「和の季節感」

井村屋

2021年に季節限定品として発売された「やわもちアイス 大学いも」(現在は販売終了)

 2016年度にはやわもちアイスにおける年間の売上は35億円を超え、井村屋の新たな看板商品として知られるようになった。そんななか、「フレーバーのラインナップや選定には、和スイーツならではの基準がある」と嶋田氏は語る。

「フレーバーのラインナップを決める際は、おもちと相性が良く、和の季節感を表現ができるものかどうかを意識しています。とはいえ難しいのが、洋風アイスはフレーバーがたくさんある一方、和風アイスはあまりフレーバーの種類がないこと。どうしてもマニアックなほうに寄ってきてしまいますが、それでも創意工夫しながらひねり出しています」

 これまでやわもちアイスは、リニューアルを除くと28種類のフレーバーを発売している。過去の商品の中で人気が高かったのは「みたらし」(2018年)、「大学いも味」(2021年)、「よもぎもち味」(2022年)だったそうだ。

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