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転職2年目で退職勧奨…29歳テレビ局員の進退「俺は活躍できないのか」

学び

潰し合いや足の引っ張り合いになる?

仕事

 さらに「ダイバーシティ(多様性)を考える企業は増えているが、異質な人材を受け入れ、高いパフォーマンスを発揮させるマネジメント力は日本の企業は全般的に弱い」とも、久保さんは指摘する。

「部長や副部長が、男性が活躍できる環境をどのように整えようとしたのか。そもそも放送局として、ある意味で異質と言える人材を受け入れる風土を作ろうとしていたのか。仮にそれらが不十分でありながら、2年目の社員を退職勧奨しているならば、大きな問題があります。新たな人を採用し、生え抜きの社員と競争させるだけならば、競争環境マネジメントをしなければ、潰し合いや足の引っ張り合いになる可能性もあるでしょう。潰し合いや足の引っ張り合いの中でも上手くいく人はいるのでしょうが、そうではない人もいるのです」

 久保さんによれば、20~30代の中途採用で特にこの類の問題が起きやすい職種は、「企画職系」だという。

「日本企業の伝統であるメンバーシップ型の最たるものと言えます。企画職で採用時のすり合わせが曖昧な状態で入社すると、本人は何を企画すればいいのかと考えるところから取り組まざるを得ない。さらにはどのように成果、実績を残せばいいのか。どういうように立ち振る舞えばいいのか、といったところから遡り、考えるケースが多い。結果として、周囲に必要以上に同調することになっていきがちなのです。これでは、組織の活性化にはなりえない」

異質で有能な人材を受け入れる下地を

 久保さんは男性へのメッセ―ジを含め、こんな説明で締めくくった。

「業界や企業規模にもよりますが、ビジネスモデルがしっかりしていて収益が確保されるビジネス構造になっている会社では、これまでと同じビジネスのあり方ならば社員の質に関係なく、部署の業績はある程度維持できる傾向があります。個人ががんばろうと、業績は大きく変わらない一面があります

 久保さんは「男性に退職を勧めない」と言うが、仮に相談を受けたら、コンサルティング経験をもとにこうアドバイスするようだ。

「異質で有能な人材を受け入れる下地がない職場に残ったところで、活躍はできない場合があります。29歳でその実績ならば、今後活躍できるフィールドはあると思います

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 本来、業界3番以内の企業は日本経済をリードするリーディングカンパニーであり、多様な価値や人材を受け入れ、活気あふれる組織を作る責任がある。それができていないがゆえに、グローバルな中で日本企業の低迷が続くのかもしれない。今回の事例は、その縮図のひとつではないだろうか。

<TEXT/吉田典史>

【久保博子(くぼ ひろこ)】
大手生命保険会社を経て、2005年から株式会社トランストラクチャで人事コンサルタントとして大企業、中堅企業やベンチャー企業の組織・人事コンサルティング業務に携わる。人事制度設計を始め、グループ人事管理の仕組みやセカンドキャリア制度、研修企画などを担当する傍ら、2011年から人事総務部長として採用や社内教育にもかかわる

ジャーナリスト。1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006年より、フリー。主に企業などの人事や労務、労働問題を中心に取材、執筆。著書に『悶える職場』(光文社)、『封印された震災死』(世界文化社)、『震災死』『あの日、負け組社員になった…』(ダイヤモンド社)など多数

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