リストラ断行&事業縮小のJALとANA。コロナ後の業績で世界との差が
コロナ禍で大打撃を受けた航空業界。外出自粛によって国内線の需要が激減したほか、各国が入国制限を実施し、国際線需要も同じく激減。ビジネス需要の減少も同業界に影響を与えました。
今後はいち早く制限緩和を実施した欧米を中心に航空需要が回復する見込みですが、国内に焦点をあてると航空会社や航空機部品メーカーによる「脱・航空」の動きがみられ、雲行きは怪しいようです。各社の動向から日本の航空産業の今後を推測してみます。
8割まで回復する世界の航空需要
カナダに本部をおく国際航空運送協会(IATA)は世界117か国290社の航空会社から構成される業界団体です。そのIATAによるとコロナ前2019年の航空旅客数(国内線+国際線)は45億人で、その後は新興国の旅行、ビジネス需要の増加に伴い、さらに増加する見込みでした。
しかし、コロナが全世界を襲った2020年は旅客数は18億人まで激減、約4割の水準まで落ち込みました。とはいえ、その後は経済活動の再開に伴って回復し、2022年度は38億人とコロナ以前の8割の水準まで戻ると予想されています。
特に莫大な航空需要を抱えるアメリカではアメリカン航空やデルタ航空など、主力の航空会社が2020年度の黒字化を予想しています。一方で日本の航空会社も国内線を中心に航空需要が回復すると予想していますが、他分野に人員を配置転換するなど本格的な回復を見込んでいないようです。
また、航空機部品メーカーでも航空機以外の分野を開拓する企業が現れています。こうした動きは国内の航空産業の縮小を示唆するものなのでしょうか。実際に各社が取り組む「脱・航空」の動きを見ていきます。
JAL:既存事業を縮小させる方針
まずは日本航空(JAL)の動きを見ていきましょう。同社の2019/3期から2022/3期までの売上高は1兆4873億円→1兆3859億円→4812億円→6872億円と推移しており、コロナの感染拡大が起きた2021/3期に大幅減となりました。
翌年度から若干回復しており、今後は再起が期待されるところですが、2022年7月、同社による3000人の配置転換計画が報じられました。これは航空輸送事業に従事する約3万1000人の1割に相当します。3000人のうち4割はLCC子会社である「株式会社ZIPAIR Tokyo」に配置するなど依然航空事業に携わることになりますが、約6割はJALグループの商社機能を有する「株式会社JALUX」に配置されるようです。
今後は、従来の航空旅客事業に代わってLCC事業やマイル事業を強化するとしており、既存事業を縮小させる方針をとっていることが分かります。ちなみにマイル事業は航空会社が提携先の店舗にマイルを販売し、消費者がその店舗で商品を購入すると店舗が消費者にマイルを付与するビジネスモデルです。
JALブランドを活用したポイント事業であり、航空需要に関係なく一定の需要を確保できる事業といえるでしょう。