クリエイターが食べていくには?“創作を支援する”弁護士に聞いた必要条件
クリエイター側に立つ弁護士に
――弁護士は法律には詳しいですが、逆に法律だけで社会を見ようとすると、社会の動向とは相容れないこともある印象です。著書の内容は多岐にわたり、とても実用的です。
山田:僕は弁護士としては全く優秀ではないので、弁護士としては大したことは書いていないんです。クリエイターが報酬を得ようと思ったとき、どこかの企業と組むことが多いですよね。例えば、マンガの掲載サイトには顧問弁護士がいます。そうするとそのサイトで起こるトラブルはひたすらそこに集約されるので、知見が溜まっていくんです。
でもその弁護士は出版社とクリエイターさんがぶつかったとき、クリエイター側に立ちにくいですよね。そうなったときに、僕のような弁護士がいたら心強いと思うんです。
――個人の話ですが、以前、書籍の原稿料が不払いになったことがあって、取り立てに会社に押しかけたことがあります。
山田:今の時代、どれだけ大きい会社でもつぶれる可能性があるので、自分の権利を早めに確定したほうがいいですね。前払いができるなら、クリエイターが先にお金をもらってから稼働する世界になってもいいと思っています。その辺は交渉の範囲内だと思いますよ。駆け出しの人はやりにくいと思いますが。
「企画書は結構本気で作りました」
――バブル崩壊以前は、前払いもどんどん行われていたようです。「記者に10万円持たせてスクープ取材に行かせた」なんて話も聞いたことがあります。例えば書籍の執筆だと、本になるまで半年、出版されてから2か月後の支払いなど、かなり報酬が先になります。フリーランスの状況を理解してくださっている編集は、何割か前払いをしてくれることもあります。
山田:継続的にいい関係を作れると分かっていたら、そうしますよね。一方で小さい会社だと、収益が確定する前に支払いをしてしまうと会社がつぶれる可能性もあるので、難しいところではありますね。僕もこの本、売れないとお金がもらえないです。
――完全印税なのですね。でも紙の本は今、滅多に企画が通らないです。
山田:結構さくさく通ったので、簡単なのかなと思っていました。ただ、本にも載せましたが、企画書は結構本気で作りましたよ。編集者の友達が何人かいたので、その人に「企画書を作ったので見て」と言ったら「あ、これいけるよ」と言ってもらえました。
その知り合い経由でKADOKAWAさんに出してもらうことになりました。一発で決まったので「こういうものなんだな」と思っていたら、「この野郎」と言われることは多いです(笑)。