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北朝鮮からポーランドへ送られた子供たちの真実…注目の韓国人監督を取材

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伝統を受け継ぐ北朝鮮の子どもたち

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――冒頭のオーディションの場面は、まさにアングルとショットのサイズの違いで、ドキュメンタリーとフィクションがうまく混ざり合っていました。脱北し、韓国で暮らす若者を対象にしており、韓国のショービズの世界のオーディションとは一線を画す生々しさを感じましたが、やはり通常のオーディションとは違うものでしたか?

チュ監督:青少年たちのオーディションは特別な経験でした。どういう経緯で北から南にきたのか事情を聞いてシナリオに反映しました。重点を置いたのは70年の間離れていた脱北者の子どもたちがどういう雰囲気で、どういうものが好きなのかを知ることでした。習慣、文化、言語、どういう音楽が好きか聞きました。

 面白かったのは、北の子どもたちが、南のアイドルやヒップホップだとかラップは好きではないことが多いことです。南の音楽で好きなのはバラード。メロディがあって、歌詞がちゃんと伝わるものが音楽だと思っていて、韓国で言うと、40代、50代以上の感覚を持っているなと感じました。

 北朝鮮の子どもたちは、「ひとり、一楽器」と言って、誰もが何らかの楽器を演奏できる教育を受けています。民謡教育など、韓国の子どもたちが受けていない伝統を受け継いでいます。子どもなのに成熟した大人のような雰囲気があるのも北の子どもたちの魅力だなと思います。

――脱北者の若者たちはポップスがあまり好きではないということですが、韓国が生んだ世界的スターグループ「BTS」などもあまり聴かないのでしょうか?

チュ監督:韓国にきて長い子たちはBTSも好きだと思います。きたばかりの子たちは慣れないと思います。一緒にポーランドに行ったイ・ソンさんの場合は、やはりバラードが好きです。心に傷を抱えているので、それを癒してくれるような、自分の感情を乗せられるような音楽が好きみたいです。

「傷を受けた治癒者」とイ・ソンの涙

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左から、イ・ソン、チュ・サンミ監督

――監督は、産後うつになったと聞きましたが、過去のトラウマとの向き合い方について教えてください。

チュ監督:傷というのは、善にもなります。山で薬草をつんで毒を抜いて薬になるのと似ていると思います。一方では、毒にもなります。誰かに同じような傷を与える人になったり、怒り続けて生きていたり。

 他の解釈をすればもっとラクになると思うんです。傷を持っているからこそ、誰かに共感し、理解し、涙を流してあげられる存在になることができます。映画の中でも「傷を受けた治癒者」という表現を使いました。傷を受けた人だからこそ治癒者になることができます。

 社会は既得権のある政治のリーダーたちが引っ張っているようにみえますが、実は「傷を受けた治癒者」たちが癒してあげられると思います。彼らが、歴史の傷を癒すことで、歴史が流れ始める。まさに私も産後うつを経験したからこそ、ポーランドへ渡った子どもたちのことを素材として映画を作り、それを世の中へ知らせ、善なる循環のようなものの事例になると思いました。

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