1冊の万引き「損害は50冊分」。“万引き被害ポスター”が話題の書店に聞く実態
茨城県を中心に展開する書店・川又書店に掲示された「1冊の窃盗被害を埋めるためには、同じ本を30~50冊売らなくてはなりません。万引きによる窃盗被害は、地域書店の存続と働く私達の生活を脅かします。」と記されたポスターは2022年5月26日、ツイッター上に投稿されると、大きな反響を集めた。
書店における万引きによるダメージが大きいことは周知されていたが、それでも具体的な数字を示されると、改めてその損害の大きさを気付かされる。
電子書籍が普及してはいるが、それでも“町の書店”は私たちの生活費必要不可欠である。書店を追い込む万引きの実態を知るため、川又書店を運営する株式会社ブックエースの取締役金子直記氏に話を聞いた。
1冊の利益率は約2%…万引きのダメージは大きい
まず、万引きが与える損害について、改めて語ってもらおう。
「一般的に1冊の本の利益構造は、原価に加えて人件費や水道光熱費、クレジットカードや電子マネーなどの決済手数料、家賃、その他運営費など様々な販売管理費がかかり、それを差し引いて残る利益は約5%となります。
現在、当社はTSUTAYAのFC本部とともに書店が持続可能な事業になるよう、利益改善に取り組んでいます。そのため、先述した費用に加えて本社コストなども差し引くと利益率は約2%です。他の小売業界も同様ですが、その1~2%のために日々努力しています。
手元の利益を2%と仮定すると、万引きによって商品を失った場合、取り戻すためには50倍の売り上げが必要です。仮に1000円の品物の利益率が2%の場合、利益は20円となります。1000円分の品物の損失を取り戻すためには、50倍の売り上げが必要になるのです」
被害が多いのはコミック、ビジネス書
具体的な利益率を聞くと、「1冊の窃盗被害を埋めるためには、同じ本を30~50冊売らなくてはなりません」という言葉がどれだけ重たいのかがより深く胸に刺さる。加えて、書店だけでなく他の小売業界でも万引きがもたらすダメージは深刻である。
もちろん万引きは犯罪であり、刑法第235条により、10年以下の懲役もしくは50万円以下の罰金が科せられる。「万引き=軽い犯罪」という認識は改めなけれないけない。