店員に“投げ銭”できる居酒屋。「100ポイント=10円」でも好評なワケは
モチベーションや接客力に大きな影響が
1つ目から熱い思いが伝わったが、田村氏は「2つ目は『マネジメントコストの軽減』です」と一転して現実的な見解を述べた。
「飲食店にとって、スタッフのモチベーション管理は最重要課題です。モチベーションコントロールはとても奥が深く、一朝一夕に学べるものではなく、多くの企業がモチベーション管理に苦慮しています。ただ、お客様から直接的に評価され、それが報酬に結び付けば、従業員自らやる気を発揮するのでは、と考えました。
そこで目をつけたのがチップ制度です。海外の飲食店の従業員は、チップ制度があることにより、自発的にお客様へのサービスを行います。居酒屋でチップ制度が浸透すれば、管理職や経営層が“モチベーション管理”に費やすコストを減らすことが可能です」
そして、3つ目は「接客力の向上」だという。
「組織には“2:6:2の法則”というものがあり、上位2割のスタッフは精神的報酬を与えると自発的に動いてくれます。一方、下位層・中間層のスタッフは精神的報酬だけでは一時的に自発的に動いたとしても長続きしません。そこで経済的報酬を絡めることで、下位層や中間層のスタッフが少しでもお客様に積極的にアプローチして、お店全体の接客力向上に繋がるために始めました。
“チップ”という言葉よりも日本人は“投げ銭”のほうが親しみがあり、お金というよりも応援という意味合いが強いと感じており、弊社では“投げ銭”と呼んでいます」
上位層がさらに頑張る悪循環
この投げ銭制度は常時行われているわけではない。第1回(2021年10月~2022年1月)、第2回(2022年2月~2022年3月)と期間限定で実施。第3回は2022年4月~2022年6月と現在進行形で進んでいる。先進的な取り組みゆえに過去2回の開催では、さまざまな困難を実感したようだ。
「苦労したことは多いです。まず第1回に直面した課題として『もともとモチベーションの高いスタッフがそのまま頑張る構図になってしまった』ことですね。“上位層のみがさらに頑張る”という構図になってしまい、ねらいであった下位層・中間層の底上げには至りませんでした。ですので、第2回以降は個人還元率を4割から7割まで引き上げ、モチベーションアップを図りました。
また、『お客様への認知の低さ』も大きな課題でした。第1回の際、お客様への周知は壁に貼ったポップのみ。この反省を活かして、第2回からはモバイルオーダー内に投げ銭のカテゴリを作成したり、弊社のアプリを活用して、2週間ごとに全店舗のランキングを載せたりなど認知拡大を行いました」