店員に“投げ銭”できる居酒屋。「100ポイント=10円」でも好評なワケは
株式会社クリエイティブプレイスが運営する居酒屋チェーン「日本酒原価酒蔵」では、従業員に“投げ銭”できる制度を2021年11月からスタートした。専用のアプリから特定の従業員を選択して、付与されたり、購入して獲得したりしたポイントに送る、というものらしい。
自分の“推し”を見つけ、応援のために消費する人は多い。ただ、推しの対象は拡大しており、飲食店で働く人を推すことさえも、市民権を得ていくのだろうか。奇抜とも思える同制度を導入した狙いを同社の営業本部長・田村忠輝氏に話を聞いた。
従業員の頑張りが報われなかった
投げ銭を導入したきっかけとしては「3つの理由がある」とのことだ。
「1つ目は『社会的意義』です。“日本の飲食店を働く人から元気に”をテーマに掲げて実施しました。というのも、飲食店は決められた時給の中で、決められた時間を、決められたオペレーションでこなすことが大半。しかし、飲食店の従業員は目の前のお客様を感動させる本当に素晴らしい仕事です。
加えて、1人の従業員の力でお客様がリピートし、売上に大きな影響を及ぼすことも多々あり、これは日本酒原価酒蔵の運営に携わり、痛いほど実感してきました。ですが、今の飲食店では、頑張って接客してもある程度決められた時給の中で働くしかありません。
お客様から『ありがとう!』『また来るね!』という言葉をいただいたり、一緒に働いている仲間から接客を褒めてもらったりなど、精神的な報酬は満たせることもあります。それはそれで良いのですが、『精神的報酬に比例して、経済的報酬がもらえたら……』といつも考えていました」
海外では年収1000万円超のサービスパーソンも
確かに、アルバイト・パートではどれだけ頑張っても時給は変わらないため、頑張って働くことを“損”と捉える人も少なくない。
「海外ではチップが一般的になっており、一流のサービスパーソンは年収1000万円を超える人がゴロゴロいることを知りました。今回の投げ銭は、ただのアプリの機能に過ぎないかもしれません。しかし、これを日本酒原価酒蔵だけでなく、日本中に文化として浸透させることができれば、気持ち良く働ける人が増えると考えました。
コロナ禍で活気のなくなった飲食店を始め、日本全体を元気にできる可能性を秘めた制度と自負しています」