“元芸人”マンボウやしろが語る、コロナという現象「何の答えも出ていません」
未来からコロナ禍を見る設定に
――短編集ですが、数を書くことには苦労しませんでしたか?
やしろ:最初に『あの頃な』というタイトルを設定して、コロナ禍のことを、未来から見るみたいな感じにしていけたらと、くくりを決めたら考えやすくなりました。実際、5年後か10年後か、20年後かわかりませんが、「コロナ禍のときに出た本なのに、意外と当たってるな」みたいに振り返って読んでもらいたいという気持ちで書いているものもあります。どれかひとつでも当たったら面白いなと。
短編の数に関しては15本くらいまでは、これが書きたいあれが書きたいという感じだったんですが、20本は欲しいなと思っていたので、ちょっと伸びなくなったときはありました。でもそれも時間が解決してくれました。
――時間が?
やしろ:担当の編集さんが本当に寛容な方で、発売日も決まってなかったんです。ドラマとか舞台の脚本の仕事が飛び込んできたら、待ってもらったりしました。締め切りがないと、書きあげられるのかという怖さはありますが、頭が整理できなくなっているときや、アイデアに詰まったときでも、コロナって、数か月もすると新しい話が出てくるんですよ。
ワクチンができるかどうかという段階のときには、副反応の話は出てなかったのが、まつわる変な話が出てきたり、変異株が出てくるとまた違うフェーズになったりしたので時間がネタをくれました。
「え?」と感じたニュースをネタに
やしろ:お化けがお客さんに触っちゃいけないという話が出てきますが(「役者と魂」)、実際、初期の頃にそういうニュースをやってたんです。これ、「10年後とかどう思ってるんだろう」と刺激されて、あそこで演劇論をやれたらいいなと思ったんです。
お客さんに何かを伝えたいんだけど、触れないから声で、声もダメになったら目で、それもダメになったら? みたいに。オチを決めずに書いていったら、ああいう感じになりました。
――オチは決めずに書き始めるんですか?
やしろ:「TOKYO 202Xマラソン」とか、オチありきで書いたものもあります。そもそも舞台の脚本なんかも最後までの展開が決まってから書き出したいほうです。でも、とにかく書かないと出版できませんし、とりあえず書き出してしまうというのも重要かなと思いますね。