“元芸人”マンボウやしろが語る、コロナという現象「何の答えも出ていません」
元お笑い芸人で、現在はラジオパーソナリティ、タレント、脚本家、演出家として活躍しているマンボウやしろさん(45)の初となる短編小説集『あの頃な』(角川春樹事務所)が、2月の発売以来、売れ続けている。
2020年初頭より日本でも新型コロナが流行し始め、緊急事態宣言による自粛期間などでライブや番組収録などがストップしたことも手伝い、芸能人による書籍発売も相次いだが、はっきりとコロナをテーマにした有名人はいなかった。
珠玉のショートショート25篇を生み出したやしろさんを直撃。前後編にわたり、前編では初小説執筆にまつわるエピソードや、あえてコロナ禍に出版した意味を、後編では、1997年に林克治さんと結成し、2011年に解散したお笑いコンビ「カリカ」の現在と未来についても聞いた。
過去にも小説を書こうとしていた
――もともと小説にも興味があったとか。ただ、ピースの又吉直樹さんが『火花』で芥川龍之介賞を獲られたことで、ストップした時期があったと聞きました。
マンボウやしろ(以下、やしろ):又吉のことは、単純にすごいなと思いました。ただ、進めていた小説のテーマが少しかぶっていたんです。あらすじも考えて、事務所とも打ち合わせしてたんですけど、どうしても芸人が書くと時期的にも比較されてしまう。そういうのはタルいなと思ったので、そのときは止めました。
――今回、オファーがあったことで、改めて小説を書いてみようと。
やしろ:自分から「書きたい」と言うと出版社に対してもハードルが高いですが、仮に拙いものであっても、オファーを受けてなら、まだ気は楽です(笑)。でもそうは言っても小説を出す機会なんて、一生でもう訪れないかもしれない。覚悟は要りましたけど、有難いなと受けることにしました。
俳優・山崎樹範の言葉で気が楽に
――コロナ禍に突入して、自粛期間などもあり、多くの芸能人の方が本を出しました。でも直球でコロナをテーマに書いた人は印象にありません。
やしろ:あまりいなかったでしょうね。僕としては、脚本とラジオの2つがメインの仕事ですが、そこにもうひとつ小説が入ってくると、脳みその整理が利かなくなるかもしれないという懸念がありました。でもコロナに関しては、どのみちラジオをやっている以上、追いかけなきゃいけないテーマなので、普段から生まれてきたものを書き留めておけばいける気がしました。
――意外にも小説は初ですが、すんなり書き進められましたか?
やしろ:いや、最初は「だれ目線で書いたらいいの?」というところからのスタートでした。「神目線? 主人公目線?」と。でも、結局“神目線”だと登場人物の心模様をどうやって書いたらいいのか、主人公目線だと短編を書いていくうちに詰まりそうだとか。みんなどうしてるのだろうと、他の小説を見ても、ルールなんてないわけだから、余計に分からなくなったりして。
もともと文学的な描写はそんなに得意じゃないし。そんなときに、本をよく読んでる友達の山崎樹範さん(俳優)に相談したら、「最近は会話で進める小説も多いから、別に描写とか、気にしなくていいんじゃない?」と言われて。そこからすごく気が楽になって、結果的に会話じゃないところも書きやすくなっていきました。