部下が上司に「何も仕事してない」と暴言。自殺者も出た“逆パワハラ”の実態
「会社に来て何も仕事をしていないのでは」
では実際にどのような発言が逆パワハラと呼ばれるのか。逆パワハラにあたる発言の一例を紹介しますので参考にしてください。
部下が「●●さん(前任の上司)はやっていたのに、あなた(現在の上司)は、なぜやらないのですか」「会社に来て何も仕事をしていないのではないですか」「いつまでこの仕事やっているのですか」「こんなこともわからないのですか」「あなたに上司の資格はありません」「あなたの存在意義はなんですか」など上司を責め立てるような発言です。
このような上司の印象を噂話として同僚に広めることも逆パワハラになります。上司を比較した発言をしないようにしてください。つい欠点ばかりが目についてしまうのが人間かも知れませんが、職場では部下の立場からもハラスメント防止を意識する必要があります。上司から逆パワハラで訴えられた、なんてことにならないように気をつけましょう。
続いて予防策としてのアドバイスをお伝えします。まず心構えとして、必要以上に上司を立てる必要はありません。ポイントは「感情的に伝えるのではなく、冷静に常識的な言葉で伝える」「部下の立場として自分の影響力を自覚し、配慮する」「上司の悪口を本人にも同僚にも言わない」「自分の意見と上司の否定を混同した発言をしない」です。上司を否定する発言をせずに自分の意見はしっかり伝えてください。
企業も逆パワハラを警戒
予防策にしてはごく普通のことですが、日々仕事の中で納得できないことが多くなってくると、感情的にもなってしまいます。上司側に落ち度があったとしても、何でも言っていいわけではありません。冷静な声のトーンで適切な言葉を選び、意見を伝えるようにしましょう。そうすることで逆パワハラを防止することができます。
今年4月から中小企業にパワハラ防止法が施行されたことにより、パワハラをしないように気をつけている上司も多いことでしょう。以前よりおとなしくなった上司の隙をついて、部下が上司に逆パワハラをしてしまったら、パワハラ防止法が活かされません。
パワハラを恐れた上司が部下に指導することを躊躇してしまう――なんてことを懸念している企業は、同時に逆パワハラの警戒もしています。上司は上司の立場として、部下は部下の立場として、業務が円滑に進められるように配慮しながら、ハラスメント対策にも協力的な姿勢が求められています。
<TEXT/ハラスメント専門家 村嵜 要>