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部下が上司に「何も仕事してない」と暴言。自殺者も出た“逆パワハラ”の実態

学び

 先日、朝の情報番組で「逆パワハラ」が取り上げられ、Twitterでトレンド入りしていました。逆パワハラとはなにか。一般的にパワハラは上司から部下に対して行われることが圧倒的に多いことはよく知られています。

パワハラ

※画像はイメージです(以下同じ)

 逆パワハラとは、文字通り、部下から上司に対して行われるパワハラを指します。上司に対して言葉遣いが悪いことや、偉そうな態度をとる。こんな部下を見たことがある人もいるかも知れません。思ったことを積極的に伝えるタイプの部下は、それ自体は素晴らしいことですが、一方で伝え方には注意が必要です。

 本記事ではハラスメント専門家の一般社団法人日本ハラスメント協会代表理事の村嵜要が逆パワハラの実態と部下の立場にいる人たちに向けて逆パワハラと呼ばれないためのアドバイスをお伝えします。

静岡市職員が部下からの逆パワハラで自殺

 2014年、当時50代の静岡市男性職員が部下から罵倒されるなどの逆パワハラに遭い、自殺する事件がありました。同年4月に男性職員は人事異動。異動した9月頃から部下による逆パワハラが始まりました。「いいかげんにしろ。やると言ってやってないじゃないか」などの発言が毎日のように続いていたとのことです。

 男性職員は10月にうつ病を発症、12月に自殺しました。半年にわたり過労死ラインとされる月80時間を超える時間外勤務が続いていたことも含め、地方公務員災害補償基金静岡市支部が2019年に 公務災害に認定。遺族は市に対して損害賠償やパワハラ行為者である職員の懲戒処分を申し入れましたが、市は「応じる考えはない」と通達。懲戒処分も行っていません。遺族は市の対応を不服として提訴しています(2020年時点)。

隙がある上司は狙われやすい?

上司

 なぜ逆パワハラは起きてしまうのか。本来は部下が上司を罵倒するようなシーンは想像しづらいことでもあります。それにもかかわらず起きてしまうのには上司側に共通する原因があります。例えば狙われやすい上司の特徴として「はっきりした指示をせず何事も曖昧にする癖がある」「業務の知識不足」「部下の仕事内容を把握していない」「部下によって態度が違いすぎる」などが挙げられます。

 これらの特徴がある場合、上司側にもかなり問題がありそうです。問題があれば部下から上司に対して容赦なく厳しい声が飛んできそうなシーンが想像できます。だからといって逆パワハラが許されるわけではありません。

 筆者が代表理事を務める日本ハラスメント協会では企業からの依頼で定期的に職場のハラスメント実態アンケートを実施しています。一般的にパワハラのパターンで多いのは「上司→部下」「同僚→同僚」「部下→上司」の順番ですが、企業単体別に見ると逆パワハラにあたる「部下→上司」のほうが「同僚→同僚」を上回っている企業も実際に存在します。

 理由はいろいろありますが、代表的な事例としては部下のほうが上司より業務上の知識が高いことや、グループ会社から出向してきた上司の場合、部下のほうが長年その場所で働いていることから社内のネットワーク(人間関係)で優位性があることです。上司の立場が弱く、部下の言動がエスカレートして逆パワハラに繋がるケースが多いと考えられます

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