小学校の給食は「人間国宝の茶碗」で。鳥取県がめざす“日本一”の食育
6つの窯元が協力して給食用器づくり
なかには、もちろん、1年に1回、ないしは数回という限定条件がつくものの、地域によってはフグだったり、カニだったり、ウナギだったりが供されるケースもあり、小さいころから本物の味を知るという意義があるのはわかっていても、羨ましさを感じたりもします。
西郷の子供たちの給食用器づくりは地元の6つの窯元が協力して行われています。発案者である前田昭博さんの「やなせ窯」をはじめ、現在六代目・七代目が活躍する「牛ノ戸焼き」、あるいは三代目・四代目の「因州(いんしゅう)・中井窯」などの歴史ある窯元の“本物の器”を手にしてそれで食事をすることができるのですから、子供たちにとっては、これほど恵まれたことはないでしょう。
そして子供たちには茶碗づくりの前にまだ本焼き前の素焼きのものを実際触らせて、力を入れすぎるとすぐに割れてしまうこと、壊れやすいものだから大切にしないといけないことを肌感覚でわかってもらうようにすることもあるのだそうです。
うっかり陶器を壊してしまうことは?
「それでも陶器ですし、小さな子供なら、給食時間中にうっかり壊してしまうということはないのですか」と少し意地悪な問いかけをしたところ、
「もし割れてしまって器として使えなくなったときは、在学中は同じ窯元さんで焼かれたもので代用します。でも、いまは週に1回、毎週水曜に使っていて、児童たちもやはりその日を特別な日と思うのでしょう。くわえて、そもそも自分がつくったものですから愛着が湧いているのでしょう。大事に使っているので、器が割れてしまうことはめったにないですね」という答えが返ってきました。
いろいろな食材があること、それを次代に残す大切さ、あるいはそれをどう料理していくかなどを伝えていくことは大事です。それが食の“素”の部分だとすると、それをどういうふうに食べるのか、“飾り”についても同様に大切なものでしょう。