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なぜ介護や保育は低賃金なのか?“必要不可欠”なのに冷遇される理由

ビジネス

最低賃金1500円が目標か

中澤秀一氏

中澤秀一氏

 しかし、エッセンシャルワーカーは 看護師や介護士といったケア労働に限らない。運送業界や一次産業など、全てのエッセンシャルワーカーの待遇改善が求められる。そこで中澤氏は政府が講ずべき策として、「最低賃金の引上げが必要と考えます」とアイデアを示す。

「現在の最低賃金は、全国平均で930円です。フルタイムで働いたとしても額面で15万~16万円で、年収200万円に満たない水準。どれだけ頑張って働いてもワーキングプアに陥る凄惨な状態です。持続可能な社会を実現するために、DECENTな仕事を増やすためには、現在の最低賃金では低すぎます。

 私の研究では、少なくとも1500円に引き上げなければDECENTにならないことがわかりました。もちろん、1500円を支払う力がない中小企業も存在します。一応、“業務改善助成金”という最低賃金を上げた企業を支援する制度がありますが、使い勝手が悪く、あまり利用されていません。

 利用しやすい助成金制度を設置し、労使折半で負担している社会保険料の減免など、中小企業のさまざまな支援策を実施すると良いでしょう

 デフレを脱却して“安いニッポン”から抜け出すことは大前提ではあるが、それとともに中小企業の支援を講じることがエッセンシャルワーカーの待遇改善につながることがわかった。エッセンシャルワーカーが安心して働けるようになれば、間違いなく生活も豊かになる。老若男女問わず“自分事の問題”であり、真剣に考えていきたい。

<取材・文/望月悠木 編集/ヤナカリュウイチ(@ia_tqw)>

フリーライター。主に政治経済、社会問題に関する記事の執筆を手がける。今、知るべき情報を多くの人に届けるため、日々活動を続けている
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年功賃金の崩壊と労働市場の激変、非正規雇用だけでなく正社員にも低所得層が増加するなかで、〈最賃1500円運動〉への期待が広がっている。 最賃引き上げで地域経済を元気にする戦略など、最低賃金1500円が切り開く社会への展望を示す。

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