「トヨタグループのホテル」元支配人が明かす、親密な付き合いとなる“女性”との出会い
常に期待値以上の創意工夫を心掛けた
「馬渕くん、今の蓼科どう?」「夏野菜のおいしいのが出るころかな?」
「いつもわがままばかりだけど、馬渕くんもゴルフメンバーに入っているから準備しといて」
敦子さんからのこうしたリクエストに、私はすべて応えた。相手の期待値以上のことをすることが感動を呼ぶと言われる。その言葉を思い出しながら、私は常に期待値以上の創意工夫をした。
電話をいただいて毎回思ったのは、「敦子さんは私に電話しているのではなく、亡くなられたご主人に電話してるんじゃないか」ということだった。生き生きとした声でかわいらしく語る敦子さんの声を聞くと、私はいつもそう思った。
ワインソムリエの資格を取得することに
ある日、亡くなられたご主人はトヨタでも有名なワイン通で、ご自宅のワインセラーにはご主人の存命時にコレクトされた数々のワインが保管されていることを知る。
さらに敦子さんからは、「ソムリエ資格を取りなさいよ。VIPがたくさん来るトヨタゆかりの地なんだし、世界で唯一のトヨタのホテルなんだから、ソムリエがいなくちゃ。今度、主人が大切にしていたワイン持ってくるから勉強しなさい」と背中を押された。
後日、私はソムリエとシニアソムリエの資格を取得した。敦子さんは本当に「勉強」と称してびっくりするような希少ワインなどを持参して泊りに来てくれたのだった。
<TEXT/元株式会社トヨタエンタプライズ・テラス蓼科リゾート&スパ支配人 馬渕博臣>